その時…。
《くそっ、この忙しい時間帯に人身事故だと…ふざけやがって》
《人の迷惑を考えてよね、まったく》
《どれくらいで動きだすんだよ》
《遅刻したらどうしてくれるんだ》
「…っ!!」
裕一郎はゾクリとして、思わず足が竦んだ。
「如月?」
啓太が、突然立ち止まった彼に声をかける。
この場の様子がおかしい…裕一郎は何も答えぬまま、ゆっくりと背後を振り返った。
(これは…)
それまで明るかったホームが一変して、たちまち黒い靄のようなものに辺りが包まれていく。
同時、それと連鎖するかのように閉鎖的な空間のあちこちから、苛立ちや不満の心の声が上り始めた。
《早くしろよ》
《早く!!》
《事故の処理なんて後回しにして、先にこっちを優先してよね》
《急いでるんだっ》
黒い靄…それは人間の持つ、心の闇のエネルギーが形となって現われたもの。
人の体温で温度上昇するホームに、負の感情が充満していくのを感じた。
(凄い、嫌な空気…)
ここから逃げ出したい。
裕一郎が前を向いたその瞬間、
「!!」
何かに足を掴まれた。
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