Darkness † Marker 5 【彷徨う者】


その時…。

《くそっ、この忙しい時間帯に人身事故だと…ふざけやがって》

《人の迷惑を考えてよね、まったく》

《どれくらいで動きだすんだよ》

《遅刻したらどうしてくれるんだ》

「…っ!!」

裕一郎はゾクリとして、思わず足が竦んだ。

「如月?」

啓太が、突然立ち止まった彼に声をかける。

この場の様子がおかしい…裕一郎は何も答えぬまま、ゆっくりと背後を振り返った。


(これは…)


それまで明るかったホームが一変して、たちまち黒い靄のようなものに辺りが包まれていく。

同時、それと連鎖するかのように閉鎖的な空間のあちこちから、苛立ちや不満の心の声が上り始めた。

《早くしろよ》

《早く!!》

《事故の処理なんて後回しにして、先にこっちを優先してよね》

《急いでるんだっ》

黒い靄…それは人間の持つ、心の闇のエネルギーが形となって現われたもの。

人の体温で温度上昇するホームに、負の感情が充満していくのを感じた。


(凄い、嫌な空気…)


ここから逃げ出したい。

裕一郎が前を向いたその瞬間、

「!!」

何かに足を掴まれた。

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