現場のドアを開けた河村は、顔を顰める。
「うは…本当に気持ち悪いな」
ビジュアル的にゾクリとして、思わず立ち竦んでしまった。
太陽の光の元で見る血の跡は、乾いて黒くなった分、妙に生々しい。
――いや、これは本当の血痕ではない。
霊の抱く残留思念が、目に見える形で焼きついたものだ。
本来なら霊と接触した所で、こんなものが残る訳はなく…。
余程この世に未練があり、死んで日の浅い者が恨みや心残りを強く抱くと、ごく稀にだがこういう現象が起こることもないとは言えない。
だが、本当に稀、だ。
河村でさえ、この仕事をやっていてこんな現象にお目に掛ったのは2度目だった。
チラリと周りを見回す…どうやら被害はカーペットと壁紙だけらしい。
先にカーペットを片づけようと屈みこんで、彼はふとある事に気づいた。
(何だ、この手形…)
這った時についたであろう手の形は、左手は指の形がきれいに残っているのに対し、右手はグシャリと潰れた感じの跡しかない。
手首…もしくは肘から下がないように見えた。
まぁ、この血痕からして普通ではないから、自殺…もしくは事故等で彷徨っている霊という所だろうか。
裕一郎が『霊は助けを求めていた』と言っていたが、こういう登場の仕方は勘弁してほしいものである。
端からクルクルとカーペットを丸めると、
「式鬼」
河村は木片を床に放つ。
それは目前で見る見る鬼の形と成す。
「こいつを裏の寺に運んでくれ。坊主の自宅の庭先に置いてきてくれればいい」
明るいが土曜で人通りも少ないし、大丈夫だろう。
もし誰かに目撃されたとしても、寺の周囲だ。
何かが出た、とくらいにしかこの辺りの住人は思わないはずだ。
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