静かな室内に、壁に掛った古い時計のセコンドが響く。
ソファーの寝心地の悪さに寝返りを打ちながら、裕一郎は考えていた。
指輪の贈り主は、どこで自分の事を知ったのか。
今回のような事が起こると、事前に分かっていたのだろうか。
裕一郎自身に、そんな人物は心当たりがない。
双瀬が言うには《凄い物》らしいし、その見解は間違っていないと思う。
既にさっきの出来事で、霊から身を守ってくれるという指輪の力は実証された。
でも――。
それだったら、自分の能力に制限を掛ける必要などないはず。
(意味分かんねーよ…)
霊と接触する度、お互いが反発し合うだけでは何の解決にもならない。
闇に還す事も消滅させる事も出来なくなってしまう。
このまま自分がいると、河村の仕事に差し支えるだけだ。
(早く捜し出さないと)
手掛かりは、あの駅を利用する成人男性と柑橘の香り。
そして、何かを知っているであろう式蝶…。
そこまで考えて、裕一郎はふと気づく。
知らないのは自分だけなのではないか、と。
それは先ほど河村の言った言葉が示している。
『贈り主の居場所を突き止めるまでは』
彼は気付いている。
でなければ贈り主の《居場所》ではなく《誰か》と言うはずだ。
まぁ、聞いた所でいつものように答えをはぐらかされてしまうのは目に見えているのだが…。
(ズルいよなぁ、久司は)
裕一郎はタメ息をつく。
いや、それが彼のやり方なのだと知っていた。
何でも人を当てにして、自分で考える事をやめてしまう人間になるな――。
表面上はちゃらんぽらんなだが、根底にはそういうキチンとした物の考え方を持っている人間なのだ。
それが分かっているから、裕一郎も必要以上には河村に頼ったりはしないようにしている。
(まぁ調べていけば、いつか答えに辿りつくだろ)
明日も早い。
裕一郎は考えるのを止めて、眠る事にした。
.


