Darkness † Marker 5 【彷徨う者】


そこには、ただ飛び散っているだけではない…人間に掴まれたような指の形も見える。


「大丈夫だよ…これ、オレの血じゃないから…」


不快なのか汚れついでとばかり、Tシャツの袖でゴシゴシと頬についている血を拭いとる仕草をした。

そう言われても怪我をしているのではないかと心配で、河村は身を屈める。

確かにどこにも傷らしきものは、見当たらなかった。


「…みたいだな」


「だから言ってるのに」


どこまでも過保護な様子に、彼は苦笑した。

「とりあえず気持ち悪いから、シャワー浴びてきてもいい?事情はその後話すから」

「あぁ。今日は事務所のソファで寝ろ。こんな汚れた部屋に寝かせるわけにはいかないからな」

「分かった。じゃあ、ちょっと行ってくる」

そう言って、裕一郎は部屋を出て行った。



「ふぅ」



汚れたカーペットを見て、河村はタメ息をつく。

霊が通った後に残された血痕。


(何があったかは分からないが、どうやら霊を消滅させた訳じゃないみたいだな…逃げたとすれば、まだ間に合うか)


河村は蜘蛛を取り出すと、

「どこに行くか、霊の場所を突き止めてくれ」

窓を開けて外へと放つ。

闇に溶け込むのを確認すると、再び部屋の中を見回した。


(どこから入りこんだのやら…ったく)


裕一郎の部屋は方角が悪いのか、祓いを行ってもこうして時々霊がここに溜まるのだ。

古いビルなので家賃が安いからと入居しているのだが、少し考えなければならないかもしれない。

河村はとりあえず祓い札をドアの内側に貼ると、裕一郎の部屋を後にした。


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