Darkness † Marker 5 【彷徨う者】

        ☆


「柑橘系の…匂い?」


啓太を車で駅まで送った後、家に帰って来るなり話し出した裕一郎の言葉に、河村は首を傾げた。

「駅のホームで匂ったものと同じ香りが、この式蝶からもするんだ」

手の平に乗せた式蝶を、裕一郎はじっと見つめる。


(どちらかと言うと現場にいたからか俺は《死臭》を感じるんだが…)


同じ式からこうも感じとる違いに差があるのかと、河村は密かに唸る。

それとも、それらのものそれぞれに式が接触したか、だ。

「…で。その式からする匂いが何だって言うんだ」

「分からないんだけど、凄く気になって…匂いの正体を知りたいっていうか…」

自分自身でも戸惑っている、そんな感じだった。


「ふぅん。そんなに気になるんだったら、明日一緒に駅に行ってみるか?」


河村の提案に、裕一郎の顔がパッと輝く。

「本当に!?」

「あぁ。俺も式蝶の行動に、少し気になることがあるしな」

言って、彼はタバコに火をつけた。


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