Darkness † Marker 5 【彷徨う者】


「如月?」

突然立ち上がった親友に、啓太が首を傾げた。

裕一郎は視線を宙に彷徨わせて《何か》を追っている。


(ま、まさか、幽霊!?)


明らかにおかしな様子に、彼はギョッとした。

そんな彼の心を知らぬまま、裕一郎はそのままスタスタと玄関の方へ歩いて行く。


「…」


河村の視線が細められた。

「裕」

声を掛ける。

「裕」

だが、返事はない。

「おい、裕一郎!!」

河村は彼の後を追うと、肩を掴み引き止めた。


裕一郎はハッと我に返る。


「…久司、式が…追いかけないと」

「あれはどこにも行かない。お前は夕刻の外出を禁止してるはずだぞ」

「あ…」

「心配するな」

河村が手を上げると、玄関に向かいかけた式蝶は舞い戻って来る。

彼はそれを自分の指に止まらせ、裕一郎の前に差し出した。

「ほら」

式は大人しく銀の羽を休めている。


(何でオレの言葉はコイツに届かないんだろ…)


裕一郎は俯く。


(分かってる。式は久司のものだから…だから、何も教えてくれないんだ)


どこで何をしていたか。

この香りはどこからつけてきたものなのか。

どこへ行こうとしていたのか。


「……」


式蝶の事で落ち込んでいる自分に落ち込む。

「朝から連れていないなとは思ったが…まぁ、いい。後で話しは聞いてやるから、向こうに戻るぞ」

ソファでキョトンとして座っている啓太に視線をやると、河村は裕一郎の背中を押した。

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