Darkness † Marker 5 【彷徨う者】


「俺はやっぱりお前が嫌いだ。肝心な坊主の役目は果たせないくせに勘ばかり鋭くて、人の神経逆なでするような言い方ばかりをする…大体、裕の事だって…」


「しーっ」


双瀬は手の平で河村の口を塞いだ。

「余り大きな声出すと聞こえるぞ、隣の部屋の裕一郎に」

「…」

河村は彼の手首を掴んで、口元から手を離させる。

「大切な家族を失くしたくなかったら、その事は口にするなっておれ、前にもお前に言わなかったっけ」

「うるさい」

「おれはお前の事を心配して言ってるんだ」

瞳を細めた双瀬の顔から、スッと笑みが消えた。

「お前が傷つく姿なんて、2度と見たくねーんだよ」

「傷つく…?はん、10代のガキじゃあるまいし、そんなガラスの心を40近いおっさんが持ってると思うのか?」

「河村…だったらお前のそのか…」

「うるさい、さっさと帰れ」

怒りを押し殺した声音を吐くと、河村は顔を背ける。

その様子に小さく肩を竦めると、

「…はいはい。じゃあ、気が向いたら教えてくれよ、そいつの名前…じゃあな」

微かな香水の香りを残して、双瀬は去って行った。

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