そこへドアが開いて、裏の寺の跡取り息子・大河内双瀬が顔を出す。
裕一郎の動きがピタリと止まった。
「何だ、随分騒がしいな…おっ、裕一郎、もう具合はいいのか?」
サラサラの前髪から覗く切れ長の瞳を細めると、ベッドの傍らに立つ。
ふわりと涼やかな香りが漂った。
「…何で双瀬さん、オレの具合が悪いこと知ってるんですか?」
「なぁんだ、覚えてないのか。お前をここに運んだのはおれだよ」
「えっ…そうなんですか?」
チラリと河村を見る。
「オレは吉山くんを学校に送っていかなきゃならなかったから、お前の事はこいつに頼んだんだ」
その途端、裕一郎の顔が赤くなる。
「じゃあ、この指輪嵌めたの…双瀬さん…?」
「指輪?」
それを聞いた双瀬は訝しげな顔をした。
「目が覚めたら、これがオレの指に」
裕一郎は左手を見せる。
双瀬は彼の手首を掴んで、それをマジマジと角度を変えながら観察していたが、
「いくら裕一郎が可愛い子ちゃんで、おれがお姫様抱っこをしてベッドまで運んだからって、指輪までは…なぁ?」
言って、ニヤリと河村を見た。
「そんな事したら、おれはこの保護者に殺されちまうよ」
「当たり前だ。大切な家族を節操無しのお前の餌食になんてさせてたまるもんか」
「あぁ、相変わらず酷ぇ言葉」
「本当の事だろ」
不機嫌極まりない顔で、彼は双瀬を睨みつけた。
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