Darkness † Marker 5 【彷徨う者】

        ☆


「……」

目を覚ますと、そこは自分の部屋だった。

「お、裕…気がついたか」

ずっと傍らについていてくれたのだろうか、久司が顔を覗き込んできた。


「あれ…オレ、学校に向かってたんじゃなかったっけ」


体を起こそうとすると、胃の辺りがまだ少しムカムカして顔を顰める。

「あー、寝てろ。その分だと相当酷く戻したんだろ」

「…ごめん、覚えてない」

裕一郎は罪の意識を感じた顔で、目を逸らした。

いつもそうなのだが、具合が悪くなると殆ど何も覚えていない。

「吉山くんが連絡くれたんだよ。お前が駅で倒れたって」

「啓太が…あっ、啓太はどうしたんだ。一緒だったはずだけど」

「俺が学校まで送っていったから、心配するな」

「ありがとう…」

それを聞いて、裕一郎はホッと胸を撫で下ろす。

「1つ手前の駅で人身事故があったんだってな。それでその場に急激に溢れた負の感情喰って倒れたんだろ」


「…」


「ま、こういう場合は仕方ないけどな。で、どうだ気分は?」

「うん、大丈夫」

「もう昼過ぎてるんだが、何か食べるか?」

「ううん、今はいい。それより久司、仕事溜まってるんだろ。オレは大丈夫だから、事務所に戻ってよ」

裕一郎は事務所の事が気になるのか、ドアの向こうを気にする素振りを見せる。

「あー、お前は鬼だな。こんな状況でも俺に仕事しろってか」


「だって…」


「こんな時くらい、俺に親らしい事の1つでもさせろよ」

河村はわしわしと裕一郎の頭を撫でた。

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