~旬磨~

…やっぱりそうか。

万桜は…ヒロが好きなんだ。

疑心が確信になった。

全国大会の時、難しい顔で前彼とホテルに帰って来た。

なにかあったとすぐに感じた。

そして万桜は俺に抱き付いてきた。

今までそんな事は一度もないのに。

万桜の手は、受け入れなれないとでもいうように俺の体に触れた事もないのに。

抱き締めても、それを返す事なく。

でも…すぐに離れた。

すがりたい人は違う、とまるで身体全体で言われた気がした。

じゃあ誰なんだ??

万桜がすがりたい奴は??

抱き締め返す、その手が求める相手は。

俺は探した。

バカみたいに必死に。

でも簡単に見つかった。

万桜を見ていたらすぐに分かった。

そして、驚くほど冷静な自分がいた。

どうしてだろう。

そいつが、ヒロ…だから??

今はまだ分からない。

他のヤツなら、もっと違う気持ちだったろうか。

でもヒロは一番近くて、一番信頼出来る友達。

アイツは万桜を受け入れるだろう。

変わったからな、ヒロは。

万桜を好きになって。

女なら誰でもいい、って奴だったけど、今は違う。

だから、幸せになれるよ。

そう、柄にもなく俺は好きな子の幸せを願っていた。

まだ諦められそうにない万桜の幸せを。