学園一の完璧王子は、私にだけ【冷徹な本性】を隠さない。

「……これ、なんですか?」
 遠ざかる背中に向かって、少し大きめの声で尋ねる。
 蓮先輩は振り返りもしないまま、ポケットに手を突っ込んで気だるそうに答えた。
 
「さっきの告白してきた女に貰ったやつ。俺、甘いもん嫌いだからお前にやる。お詫びの労働代。……じゃあな、また明日」
 
 階段の向こうへ消えていく先輩の足音が響く。
 手のひらの上のお菓子は、ほんのりと温かかった。
 
(……意地悪で、冷酷で、嘘つきな悪魔のくせに。どうして最後に、こういうことするの……?)
 トクン、と胸の奥で、朝とは違う小さな音が跳ねた。
 冷たい檻に閉じ込められたはずの私の毎日は、ここから少しずつ、狂い始めていく——。