六月。
新チームになってから、二か月が経った。
体育館の暑さも、少しずつ増してきた。
「ラスト二本!」
しょうぶの声が響く。
「声出せー!」
ゆうとが続く。
「おうせい、右!」
れいの声。
「はい!」
一年生のおうせいが走る。
パスを受けたあつきがシュート。
外れる。
「リバウンド!」
たくやが叫ぶ。
ボールを拾ったみずきが、すぐに戻す。
「ナイス!」
ゆうとが笑う。
新しいチームは、少しずつ形になっていた。
最初の頃とは違う。
誰かがミスすれば、誰かが声をかける。
苦しくなれば、誰かが走る。
それが当たり前になりつつあった。
けれど――。
その日の練習試合。
相手は県内でも上位にいる高校だった。
開始早々、点差が開いた。
10点。
15点。
20点。
「まだいける!」
しょうぶが叫ぶ。
「一本ずつ!」
ゆうとも声を出す。
けれど、相手のプレッシャーは強かった。
パスが通らない。
シュートも落ちる。
ディフェンスも崩れる。
そして。
「タイムアウト!」
ベンチに戻る。
みんなが息を切らしていた。
しょうぶがホワイトボードを見る。
「……どうする?」
誰も答えない。
るいも考えている。
そのとき。
「一回、落ち着こう」
りょうたが言った。
全員が顔を上げる。
「焦ってる」
りょうたは続けた。
「相手が強いからって、早く返そうとしてる。それでミスが増えてる」
「……確かに」
るいが頷く。
りょうたが続ける。
「俺たち、別に今すぐ20点返さなくていい」
しょうぶを見る。
「まず一本」
「……うん」
「一本取ったら、また一本」
りょうたの声は静かだった。
でも、不思議と全員が落ち着いた。
後半。
少しずつ流れが変わった。
一本。
また一本。
点差が20点から15点に。
15点から11点に。
「いけるぞ!」
たくやが叫ぶ。
「まだある!」
ゆうとも叫ぶ。
れいが相手のボールを奪う。
「ナイス!」
おうせいが走る。
速攻。
シュート。
入る。
「よし!」
ベンチが沸く。
その瞬間。
たくやが誰よりも大きな声で叫んだ。
「まだいける!」
結局。
試合には負けた。
最終スコアは、78対69。
9点差。
試合終了のブザーが鳴る。
「ありがとうございました!」
両チームが礼をする。
戻ってきた選手たちに、先生が言った。
「負けたけど、後半は良かった」
しょうぶが頷く。
「はい」
るいも頷いた。
「前半、完全に俺たちが焦ってました」
りょうたが言う。
「でも後半は、ちゃんとバスケできてた」
「そうだな」
先生が言った。
「今日の試合、覚えておけ」
「はい」
片付け。
たくやがボールを拾っていた。
ゆうとが近づく。
「たくや」
「ん?」
「今日、よかったな」
「何が?」
「後半」
たくやは笑った。
「俺じゃなくて、みんなが良かったんだよ」
「そういうとこ」
「何?」
「すぐ自分のこと後回しにする」
たくやは少し黙った。
「……別に」
「俺、見てたから」
「何を?」
「最後までずっと声出してた」
たくやが笑う。
「声出すくらいしかできないから」
その言葉に、ゆうとの表情が変わった。
「……それ、本気で言ってる?」
「え?」
「たくやが、声出すくらいしかできないって」
「いや、だって」
「俺はそう思わないけど」
たくやは何も言わなかった。
ゆうとは続けた。
「お前、誰より練習してるじゃん」
「……」
「誰より走ってるし」
「……」
「なのに、いつも自分のこと大したことないみたいに言うじゃん」
たくやは俯いた。
「……だって」
「うん」
「頑張ってるって思われるの、なんか恥ずかしい」
ゆうとは少し笑った。
「変なの」
「うるさい」
「でも、たくやらしい」
「何それ」
二人で笑う。
そのとき。
「おーい!」
体育館の入口から、るいの声がした。
「帰るぞー!」
「今行く!」
たくやが返事をする。
そして、ゆうとの横を通り過ぎる。
「……ゆうと」
「ん?」
「ありがとな」
「何が?」
「……なんとなく」
ゆうとは笑った。
「うん」
帰り道。
六人で歩く。
しょうぶが今日の試合について話している。
「前半、俺もっと周り見ないとな」
「そうだな」
りょうたが答える。
「でも後半は良かった」
れいが言う。
「うん」
たくやも頷く。
「次は勝とうぜ」
ゆうとが言う。
るいがみんなを見る。
「うん」
そして、少しだけ笑った。
六月。
夏の大会まで、あと少し。
六人はまだ知らない。
この何気ない帰り道が、
あとになって、
「あの頃に戻りたい」と思うほど大切な時間になることを。
新チームになってから、二か月が経った。
体育館の暑さも、少しずつ増してきた。
「ラスト二本!」
しょうぶの声が響く。
「声出せー!」
ゆうとが続く。
「おうせい、右!」
れいの声。
「はい!」
一年生のおうせいが走る。
パスを受けたあつきがシュート。
外れる。
「リバウンド!」
たくやが叫ぶ。
ボールを拾ったみずきが、すぐに戻す。
「ナイス!」
ゆうとが笑う。
新しいチームは、少しずつ形になっていた。
最初の頃とは違う。
誰かがミスすれば、誰かが声をかける。
苦しくなれば、誰かが走る。
それが当たり前になりつつあった。
けれど――。
その日の練習試合。
相手は県内でも上位にいる高校だった。
開始早々、点差が開いた。
10点。
15点。
20点。
「まだいける!」
しょうぶが叫ぶ。
「一本ずつ!」
ゆうとも声を出す。
けれど、相手のプレッシャーは強かった。
パスが通らない。
シュートも落ちる。
ディフェンスも崩れる。
そして。
「タイムアウト!」
ベンチに戻る。
みんなが息を切らしていた。
しょうぶがホワイトボードを見る。
「……どうする?」
誰も答えない。
るいも考えている。
そのとき。
「一回、落ち着こう」
りょうたが言った。
全員が顔を上げる。
「焦ってる」
りょうたは続けた。
「相手が強いからって、早く返そうとしてる。それでミスが増えてる」
「……確かに」
るいが頷く。
りょうたが続ける。
「俺たち、別に今すぐ20点返さなくていい」
しょうぶを見る。
「まず一本」
「……うん」
「一本取ったら、また一本」
りょうたの声は静かだった。
でも、不思議と全員が落ち着いた。
後半。
少しずつ流れが変わった。
一本。
また一本。
点差が20点から15点に。
15点から11点に。
「いけるぞ!」
たくやが叫ぶ。
「まだある!」
ゆうとも叫ぶ。
れいが相手のボールを奪う。
「ナイス!」
おうせいが走る。
速攻。
シュート。
入る。
「よし!」
ベンチが沸く。
その瞬間。
たくやが誰よりも大きな声で叫んだ。
「まだいける!」
結局。
試合には負けた。
最終スコアは、78対69。
9点差。
試合終了のブザーが鳴る。
「ありがとうございました!」
両チームが礼をする。
戻ってきた選手たちに、先生が言った。
「負けたけど、後半は良かった」
しょうぶが頷く。
「はい」
るいも頷いた。
「前半、完全に俺たちが焦ってました」
りょうたが言う。
「でも後半は、ちゃんとバスケできてた」
「そうだな」
先生が言った。
「今日の試合、覚えておけ」
「はい」
片付け。
たくやがボールを拾っていた。
ゆうとが近づく。
「たくや」
「ん?」
「今日、よかったな」
「何が?」
「後半」
たくやは笑った。
「俺じゃなくて、みんなが良かったんだよ」
「そういうとこ」
「何?」
「すぐ自分のこと後回しにする」
たくやは少し黙った。
「……別に」
「俺、見てたから」
「何を?」
「最後までずっと声出してた」
たくやが笑う。
「声出すくらいしかできないから」
その言葉に、ゆうとの表情が変わった。
「……それ、本気で言ってる?」
「え?」
「たくやが、声出すくらいしかできないって」
「いや、だって」
「俺はそう思わないけど」
たくやは何も言わなかった。
ゆうとは続けた。
「お前、誰より練習してるじゃん」
「……」
「誰より走ってるし」
「……」
「なのに、いつも自分のこと大したことないみたいに言うじゃん」
たくやは俯いた。
「……だって」
「うん」
「頑張ってるって思われるの、なんか恥ずかしい」
ゆうとは少し笑った。
「変なの」
「うるさい」
「でも、たくやらしい」
「何それ」
二人で笑う。
そのとき。
「おーい!」
体育館の入口から、るいの声がした。
「帰るぞー!」
「今行く!」
たくやが返事をする。
そして、ゆうとの横を通り過ぎる。
「……ゆうと」
「ん?」
「ありがとな」
「何が?」
「……なんとなく」
ゆうとは笑った。
「うん」
帰り道。
六人で歩く。
しょうぶが今日の試合について話している。
「前半、俺もっと周り見ないとな」
「そうだな」
りょうたが答える。
「でも後半は良かった」
れいが言う。
「うん」
たくやも頷く。
「次は勝とうぜ」
ゆうとが言う。
るいがみんなを見る。
「うん」
そして、少しだけ笑った。
六月。
夏の大会まで、あと少し。
六人はまだ知らない。
この何気ない帰り道が、
あとになって、
「あの頃に戻りたい」と思うほど大切な時間になることを。



