新チームになって、二週間。
少しずつ練習の形が決まってきた。
一年生も、最初の頃より声が出るようになった。
二年生も、自分たちから動くことが増えた。
そして三年生の六人も、それぞれの役割が見え始めていた。
るいは全体を見る。
しょうぶは先頭に立つ。
りょうたは必要なときだけ口を出す。
ゆうとは声を出して空気を作る。
れいは守備でチームを支える。
たくやは、みんなを笑わせる。
一見すると、うまくいっている。
けれど――。
「たくや、今日シュート入ってなかったな」
練習後、ゆうとが笑いながら言った。
「いやー、今日はリングが俺を嫌ってた」
「リングのせいにすんなよ」
「明日は仲直りするから」
たくやは笑った。
「じゃあな」
「おう」
たくやはみんなと別れ、一人で体育館に戻った。
誰もいないと思った。
ボールを一つ持って、スリーポイントラインに立つ。
シュート。
外れる。
もう一度。
外れる。
「……くそ」
小さく呟いた。
また打つ。
今度は入った。
でも、たくやは喜ばない。
すぐに次のボールを拾う。
シュート。
外れる。
「……もう一本」
また打つ。
「たくや?」
突然、声がした。
たくやが振り返る。
体育館の入口に、りょうたが立っていた。
「……りょうた?」
「まだいたんだ」
「うん。ちょっとだけ」
たくやは笑った。
「自主練?」
「まあね」
りょうたは体育館に入ってくる。
「最近、毎日残ってるよね」
「そう?」
「うん」
「気のせいじゃない?」
「……そう」
りょうたはそれ以上言わなかった。
たくやはホッとしたように笑う。
「りょうたもやる?」
「俺はいい」
「じゃあ帰る?」
「たくやが終わるまでいる」
「え?」
「別に」
りょうたは壁際に座った。
たくやは困ったように笑った。
「なんで?」
「なんとなく」
「変なの」
そう言いながら、またシュートを打つ。
一本。
入る。
「ナイス」
りょうたが言う。
「ありがと」
もう一本。
入る。
「今のも」
「でしょ?」
たくやが笑う。
でも、その笑顔は少しだけ疲れていた。
その頃。
体育館の外では、ゆうととれいが歩いていた。
「たくや、まだ残ってる?」
ゆうとが聞く。
「うん」
れいが答える。
「そっか」
ゆうとは少しだけ立ち止まった。
「……最近、あいつ無理してない?」
「思う」
れいが答える。
「でも本人に聞いても、笑って誤魔化す」
「だよな」
ゆうとは苦笑した。
「たくやって、昔からそうだから」
「知ってる」
「怒られても笑うし」
「うん」
「失敗しても笑うし」
「うん」
「疲れてても笑う」
れいが黙った。
「……笑わないと、ダメだと思ってるのかな」
ゆうとが呟く。
れいは少し考えた。
「たぶん」
「……そっか」
ゆうとは体育館を見る。
「俺、あいつのことちゃんと見れてると思ってた」
「見てるよ」
「でも、見てるだけじゃダメなのかもな」
れいがゆうとを見る。
ゆうとは笑っていた。
いつもの笑顔。
でも、その目は笑っていなかった。
その翌日。
練習中。
「たくや!」
しょうぶが叫んだ。
「はい!」
「今のディフェンス!」
「ごめん!」
「昨日も同じこと言ったよな?」
「ごめんごめん!」
たくやは笑う。
「次気をつける!」
「笑ってる場合じゃないだろ」
しょうぶの声が少し強くなった。
体育館が静かになる。
たくやは一瞬だけ黙った。
「……うん」
それでも、すぐに笑った。
「次頑張る!」
しょうぶは何も言わなかった。
練習が再開する。
その様子を、ゆうとはじっと見ていた。
休憩。
たくやが水を飲んでいると、ゆうとが隣に座った。
「たくや」
「ん?」
「最近、ちゃんと寝てる?」
「寝てる寝てる」
「ほんと?」
「ほんとだって」
「自主練も?」
「まあ、ちょっとだけ」
「毎日?」
「……まあ」
ゆうとは黙る。
たくやが笑う。
「何? 心配してんの?」
「してる」
「大丈夫だよ」
「そっか」
「うん」
ゆうとはそれ以上聞かなかった。
ただ、
「無理なときは言えよ」
と言った。
たくやは笑った。
「大丈夫だって」
「……うん」
二人の間に、少しだけ沈黙が流れる。
そして、たくやが立ち上がった。
「行こうぜ」
「うん」
ゆうとも立ち上がる。
二人でコートへ戻る。
たくやは笑っていた。
ゆうとも笑っていた。
でも――。
二人とも、本当は分かっていた。
「大丈夫」という言葉だけでは、隠せないものがあることを。
少しずつ練習の形が決まってきた。
一年生も、最初の頃より声が出るようになった。
二年生も、自分たちから動くことが増えた。
そして三年生の六人も、それぞれの役割が見え始めていた。
るいは全体を見る。
しょうぶは先頭に立つ。
りょうたは必要なときだけ口を出す。
ゆうとは声を出して空気を作る。
れいは守備でチームを支える。
たくやは、みんなを笑わせる。
一見すると、うまくいっている。
けれど――。
「たくや、今日シュート入ってなかったな」
練習後、ゆうとが笑いながら言った。
「いやー、今日はリングが俺を嫌ってた」
「リングのせいにすんなよ」
「明日は仲直りするから」
たくやは笑った。
「じゃあな」
「おう」
たくやはみんなと別れ、一人で体育館に戻った。
誰もいないと思った。
ボールを一つ持って、スリーポイントラインに立つ。
シュート。
外れる。
もう一度。
外れる。
「……くそ」
小さく呟いた。
また打つ。
今度は入った。
でも、たくやは喜ばない。
すぐに次のボールを拾う。
シュート。
外れる。
「……もう一本」
また打つ。
「たくや?」
突然、声がした。
たくやが振り返る。
体育館の入口に、りょうたが立っていた。
「……りょうた?」
「まだいたんだ」
「うん。ちょっとだけ」
たくやは笑った。
「自主練?」
「まあね」
りょうたは体育館に入ってくる。
「最近、毎日残ってるよね」
「そう?」
「うん」
「気のせいじゃない?」
「……そう」
りょうたはそれ以上言わなかった。
たくやはホッとしたように笑う。
「りょうたもやる?」
「俺はいい」
「じゃあ帰る?」
「たくやが終わるまでいる」
「え?」
「別に」
りょうたは壁際に座った。
たくやは困ったように笑った。
「なんで?」
「なんとなく」
「変なの」
そう言いながら、またシュートを打つ。
一本。
入る。
「ナイス」
りょうたが言う。
「ありがと」
もう一本。
入る。
「今のも」
「でしょ?」
たくやが笑う。
でも、その笑顔は少しだけ疲れていた。
その頃。
体育館の外では、ゆうととれいが歩いていた。
「たくや、まだ残ってる?」
ゆうとが聞く。
「うん」
れいが答える。
「そっか」
ゆうとは少しだけ立ち止まった。
「……最近、あいつ無理してない?」
「思う」
れいが答える。
「でも本人に聞いても、笑って誤魔化す」
「だよな」
ゆうとは苦笑した。
「たくやって、昔からそうだから」
「知ってる」
「怒られても笑うし」
「うん」
「失敗しても笑うし」
「うん」
「疲れてても笑う」
れいが黙った。
「……笑わないと、ダメだと思ってるのかな」
ゆうとが呟く。
れいは少し考えた。
「たぶん」
「……そっか」
ゆうとは体育館を見る。
「俺、あいつのことちゃんと見れてると思ってた」
「見てるよ」
「でも、見てるだけじゃダメなのかもな」
れいがゆうとを見る。
ゆうとは笑っていた。
いつもの笑顔。
でも、その目は笑っていなかった。
その翌日。
練習中。
「たくや!」
しょうぶが叫んだ。
「はい!」
「今のディフェンス!」
「ごめん!」
「昨日も同じこと言ったよな?」
「ごめんごめん!」
たくやは笑う。
「次気をつける!」
「笑ってる場合じゃないだろ」
しょうぶの声が少し強くなった。
体育館が静かになる。
たくやは一瞬だけ黙った。
「……うん」
それでも、すぐに笑った。
「次頑張る!」
しょうぶは何も言わなかった。
練習が再開する。
その様子を、ゆうとはじっと見ていた。
休憩。
たくやが水を飲んでいると、ゆうとが隣に座った。
「たくや」
「ん?」
「最近、ちゃんと寝てる?」
「寝てる寝てる」
「ほんと?」
「ほんとだって」
「自主練も?」
「まあ、ちょっとだけ」
「毎日?」
「……まあ」
ゆうとは黙る。
たくやが笑う。
「何? 心配してんの?」
「してる」
「大丈夫だよ」
「そっか」
「うん」
ゆうとはそれ以上聞かなかった。
ただ、
「無理なときは言えよ」
と言った。
たくやは笑った。
「大丈夫だって」
「……うん」
二人の間に、少しだけ沈黙が流れる。
そして、たくやが立ち上がった。
「行こうぜ」
「うん」
ゆうとも立ち上がる。
二人でコートへ戻る。
たくやは笑っていた。
ゆうとも笑っていた。
でも――。
二人とも、本当は分かっていた。
「大丈夫」という言葉だけでは、隠せないものがあることを。



