ギャルが異世界にトリップしたら、暗殺一家の大公子とスパダリ婚する事になりました

深夜、ルナ帝国上部街にある闇市場(ブラックマーケット)から、鎖に繋がれた獣人少年が黒い夜道の中を必死に走っていた。

「はぁっ、はぁっ!!!」

「おい、獣人の奴隷のガキが逃げ出したぞ!!!」

「チッ、あのガキは明後日の商品なんだ。怪我を負わせても構わん、何としてでも探し出せ!!!」

たいまつを手にした数人のガラの悪い男達が辺りを照らし、檻から逃げ出した獣人の少年の姿を探す。

獣人の少年は、自分が助かりたいから逃げ出したのではなく、同じ檻の中で懐いていた獣人の青年を助ける為だった。

奴隷商人の男達に見つからにように、獣人の少年は泣きながら走り続ける。

「あの人ならっ、助けてくれるっ…。絶対に助けるからっ、待っててっ、ガゼルッ!!!」

獣人の青年の名前を呼びながら、獣人の少年は中部街に向かう為に、暗闇の街の中に溶け込んだ。

***

甘野芣婭 (17歳)

ギルベルト君のお家から帰って来た後、昼前まで眠ってしまい、シーちゃんに遅めだけど、身支度を手伝ってもらっていた。

その隣で、ケロちゃんは芣婭がメイクしているのを不思議そうに見つめ、メイク道具が入ったポーチを覗き込む。

「ふふふっ」

「ご機嫌ですね?何か良い事がありましたか?」

芣婭の笑い声を聞いたシーちゃんが、鏡越しで微笑ましそうに芣婭の事を見ている。

いやぁ、昨日のはヤバかったなぁ。

ギルベルト君と沢山ちゅーしちゃったし、好きって言って貰えた事も、元の世界と行き来できる方法を見つけようって言ってくれた事も嬉しかった。

芣婭の事をちゃんと考えてくれてるんだなって、分かって嬉しかったし。

あー、ギルベルト君と付き合ったって、みんなに言いたい!!

でも、ギルベルト君の許可を貰ってから言った方が良いよね?

異世界の恋愛事情とか知らないし、ペラペラ話すようなものじゃないのかも。

「うんっ、シーちゃんに言いたいんだけどさぁ。言っていいか分からないから、ギルベルト君に聞いてから言うね!」

「ギルベルト様と関係する事ですか?」

「そうなの、芣婭だけの問題じゃないからさ」

「ゔー、頭痛ってぇ…」

シーちゃんち話していると、大きなソファーで寝転んでるベロちゃんが、頭を押さえながらうなだれていた。

「頭痛いの?もしかして、二日酔い?イケメンお兄さんと飲んでたんだっけ」

「あの男…、悪魔相手に馬鹿みたいな量を飲ませてきやがってよ…」

「マジか、ケロちゃんは平気そうだね。お酒強いんだ」

「アイツが弱いだけです」

「あ⁉ゔっ、頭に響く…」

ケロちゃんの言葉を聞いて突っかかろうとしていたが、悪魔のベロちゃんでも二日酔いの頭痛には勝てないらしい。

そう言えば、昨日はじゃなく、夜中に色々あったから魔界に行ってた事をギルベルト君に言いそびれたな。
コンコンッと扉が数回叩かれ、扉越しで聞こえてきたのは執事おじの声だった。

「おはようございます、芣婭様。身支度の御ご用意が済みましたら、客間にお越し頂いてもよろしいでしょうか?」

「客間に?」

「実は先程、ギルベルト様がお越しになられまして」
「え⁉ギルベルト君が⁉す、すぐに行く!!!」

「かしこまりました、旦那様達にも伝えておきますね。ごゆっくり準備をなさってから、お越し下さい」

芣婭の返事を聞いた執事おじは、クスクスと小さく笑いながら扉の前から去って行く足音が聞こえる。

シーちゃんは手際よく髪やワンピースの裾を整え、椅子に座っていた芣婭に手を差し出し、立ち上がらせてくれた。

ケロちゃんはいつの間にか狼の姿になって、芣婭の太もも部分に頬を摺り寄せている。

「よしよし」と言いながらケロちゃんの頭を撫で、ソファーで死んでるベロちゃんに声をかけようか迷うな。

「俺も行くぞ…」

「でも、めっちゃ辛そうだけど…。ゆっくり寝てて良いんだよ?ケロちゃんが一緒に来てくれるし」

「ゔっ…、気に喰わないが、頼むわ…」

本当に二日酔いがつ辛いのか、ケロちゃんに突っかかてこない。

「シーちゃん、この世界って二日酔いに効くものってない?へパ●-ゼ的なの」

「ヘパ?芣婭様の世界にあるような物ではありませんが、薬草やスープなどは用意できますよ。厨房に伝えておきます、悪魔に効果があるかは分かりませんが…」

「ありがとう、シーちゃん!申し訳ないけど。お願いしてもいい?」

「かしこまりました、芣婭様を客間に御案内してから厨房に行きますね」

シーちゃんと話ながら客間に向かい、到着するしてシーちゃんが扉をのノックする前に扉が開かれる。

開かれた扉の先にいたには、ニックとレヴァさんとサングラスお兄さんの3人が芣婭達を出迎え、めっちゃびっくりした。

驚いていると、ニコニコしているサングラスお兄さんに手を差し出される。

「ようこそぉ、待ってたよ。我らが王のお姫様」

「んーと?サングラスさんだったっけ?」

「サングラスはいつも掛けてるけど、紫外線に弱いからなんだよねぇ」

「そんな事情が!!!失礼なんだけど、名前なんだっけ?1回で覚えられなくて…っ」

自己紹介してくれた相手に、こんな事を言うのは失礼過ぎるよなぁ…。

どーしたら長い名前を覚えきれるんだ?こりゃあ。

「ローレンツ・ガルバルトって名前は長いだろ?お姫
様が覚えやすいように呼んでくれたらいいよ」

「じゃあ、ローさんでも?」

「おお、珍しい呼び方だねぇ。ハハッ、もう少し話したい所だけど…、王様に怒られたくないからね」

ローさんがそう言うと、数時間ぶりのギルベルト君がニックとレヴァさんの2人の間から顔を出し、芣婭に
金平糖よりも甘い視線を送ってきた。

今までも優しかったけど、比べものにならないくらいに甘過ぎる!!!

歴代の彼ピとは全然違う、目を見るだけで芣婭の事が
大好きだって分かるもん。

「芣婭、帰りが遅くなったが眠れたか?」

「うん、お昼前まで寝ちゃってた。ふふっ、今日もギルベルト君に会えて嬉しい」

「俺だ」

「今日はどうしてお家に?芣婭に会いに来てくれたの?なーんちゃって」

「勿論、芣婭の顔を見に来たのもあるが、夫妻達に俺達の事を報告しないといけないだろ?」

そう言いながら、ギルベルト君は自然に芣婭の手を握って、客間に置かれた4人掛けのソファーに座らせて、対面に座ってるママとパパは不思議そうな顔をしている。

ママとパパだけじゃなく、シーちゃんもニックスもレヴァさんもローさんもだ。

みんなは芣婭達が付き合ってる事を想像してないだろうな。

「ギルベルト様が、家にお越しになられたのは娘と関係ある事ですか?」

「夫妻には俺達が交際を始めた事を、最初に報告しに来ました」

「あぁ、娘と交際を始めたんですね、そうですか…。ん?大公子殿下、申し訳ないのですが…、何て言いました?」

「娘さんと交際を申し込み、了承が頂けましたので交際を始めました」

「…、え?」

パパはギルベルト君の言葉を聞くと目を丸くさせ、ママは今にも叫び出しそうな雰囲気をして、数秒後にママの大きな声が客間に響き渡った。

「キャアアア!!!素敵ー!!!どっちから?どっちから申し込んだのー⁉」

「本当なんですか、ギルベルト様!?芣婭ちゃんが、ギルベルト様のモノになっちゃたよーっ」

「交際を申し込んだのは俺からです。ニック、どういう意味で言ってんだ?」

ギルベルト君はママの質問に答えた後、残念がるニックを睨み付けている中、レヴァさんの顔色が悪くなってきている。

ツンツンッとレヴァさんの手を指で突くと、さっきまで顔色が悪かったのに芣婭の顔を見ると血の気が戻って行った。

「ど、どうしましたか?芣婭様」

「レヴァさん、顔色が悪かったから大丈夫かなって。でも、顔色がすぐに戻って良かった」

「え?」

「レヴァさんが倒れたら、芣婭は悲しいよ」

「…、貴方は本当に狡い人だ」

芣婭の言葉を聞いたレヴァさんは顔を真っ赤にさせ、小声で何か呟いていたが何を言っているか分からなかった。

「ごめん、なんて言った?うまく聞き取れなかったから」

「いえ、何でもないです。おめでとうございます、芣婭様、ギルベルト様」

「ふふっ、ありがと!」

「てか、ケロべロスが何も言わないの珍しいな。いつもなら猛反対する所じゃない?」

レヴァさんと話していると、何も言わないケロちゃんに対してニックが不思議そうに声をかけている。

「そう言えば、言われてみればそうかも」

「芣婭の幸せは俺達の幸せですから、気に入らないですけどね」

「ケロちゃん…」

「奴は騒ぎ立てそうですけど」

「あー…」

二日酔いで死んでるベロちゃんの顔が頭に過り、ここにいた場合の事が想像出来てしまった。

今日は二日酔いで居なくて良かったのかも、ごめんねベロちゃん。

「あ、あの!ギルベルト様っ。失礼と存じて申し上げますが、うちの娘の事を傷付ける事だけはしないで下さい。芣婭を養子として迎え入れて火が浅いですが、妻も私も芣婭の事を愛してしますから」

「はい、娘さんの事を一生泣かせません」

「その言葉、信じさせてもらいます」

歴代の彼ピ達は付き合って1日目で親に挨拶なんかした事ないし、来たとしてもお父さんとお母さんは関心も持たなかっただろう。

だけど、こっちの世界のパパは芣婭の事を大事に思ってくれて、ギルベルト君に面と向かって言ってくれて。

いつの間にか芣婭の目から涙が零れ落ち、泣いているの事に気付いたパパとギルベルト君達の顔が青くなる。

「ふ、芣婭!?ど、どうして泣いてるんだ!?な、何か嫌な事言ったかな、僕っ」

「お、俺も何かしたか?気付かないうちにしてた可能性が…」

「ち、違うよ!2人は何もしてなよ。ただ、パパの愛を感じて感動しちゃっただけ!」

こっちの世界に来てから、少し大変な事に遭遇したけど、芣婭を大切にしてくれる人達と出会える事が出来て良かった。

ギュッと優しく芣婭の手を握りながら、ギルベルト君は「大切にする」って言ってくれる。

「ふふっ、オルタニア様も混じれて食事会でも開きましょうよ。私達の大事な子供達の交際をお祝いしないと!」

「父が帰ってきたら言ってみますよ」

「ありがとうこざいます、楽しみにしていますわ」

「ご飯会も大切なんだけど、ギルベルト君にお願いがあるの!」

芣婭の言葉を聞いたギルベルト君は、ママとの会話を終わらせて芣婭に視線を向けて優しく微笑む。

「お願いってなんだ?」

「あのね、芣婭のレベルアップに付き合ってほしいの!」

「は?」

***

翌日の朝、芣婭はギルベルト君のお家の横にある黒騎士団(ブラックナイト)達の団員さんが整列している中に混ざっていた。

野球の試合場ぐらいの広さで、これなら沢山の団員さん達が動き回っても平気そう。

ざわざわ…。

「おい、あんな可愛い女の子入団してたか?」

「いやぁ、見た事ないけど…。うちの練習着を着てるからそうなんじゃないのか?」

「おもちゃみたいな杖持ってるけど…?魔法使いか?あの子」

こっちの世界にもジャージってあったんだなぁ、ギルベルト君がすぐ届けてくれたら良かった!

上着だけオーバーサイズのものと長ズボンはSサイズを用意してくれたから、ママにお願いしてズボンの長さを切ってもらって。

デザインも悪くないし、スニーカと合せても良かったんだけど、なかったから合いそうなショートブーツを履いて、髪の毛はハーフツインテールに。

知ってる人がいない中、こっそり列に混ざって並んでると体育の授業を思い出すな。

ケロちゃんとベロちゃんの2人は起きた時から姿がなかったけど、どこかに出掛けてしまっていて、一緒に来ていない。

ギルベルト君達と話をした後、ベロちゃんに報告をした時は大騒ぎになったんだよね。

「はぁ!?ギルベルトと付き合っただぁ!?俺様は許可してねーぞ!!!」

「そ、そうなんだけど、流れで付き合う事になっちゃって…」

「ありえねぇ、芣婭が誰かのモノになるとか!!!グアー!!!」

「少しは落ち着いて下さいよ、この馬鹿」

5歳の男の並みの騒ぎようだったから、ケロちゃんと一緒になって宥めるのに4時間はかかったんだよなぁ…。

「第3部隊の部隊の隊長と副団長達って、いつ頃帰ってくるんだっけか?」

「東方のブラーンの復興の支援に向かってったんだよな。とんだ災難だったよな、悪魔達に襲われるなんてさ」

男の人達の会話が聞こえてきたけど、なんちゃらって街に悪魔達が現れて襲われたって事なんだよね?

魔界に行って、ダンタリオン様の部下の悪魔達に会ったけど、悪い悪魔って感じはしなかっだんよなぁ。

あ、あのアスタロッテ?って、悪魔はヤバイ奴だったんだっけ?

(アスタロッテ×、アスタロト〇)

校長先生が外の集会の時に立って喋る台にコンラットが上がり、顔付きも芣婭といる時とは違って、キリッとしてる。

それは台の右横に立ってるヒューズもキリッとして、2人以外にも、ローさんとエリっちも立っていてた。

ツンツンッと肩を指で突かれ、視線を向けるとニックとレヴァさんがいつの間にか芣婭に左右に移動して来てる事に気付く。

「あっ、2人共!いつの間に?」

「団員達を掻き分けて来たんだっ、まさかうちの訓練に芣婭ちゃんが参加するとはなぁ。魔法の練習の為だっけ?」

「うんっ、レベルアップしようと思ってっ。パパが作ってくれた杖も持って来た」

そう言って、パパ作の杖をニックに見せた。

ニックにビビットピンクの大きなハートが装飾され、ピンクゴールドの王冠が飾られていて、いかにも魔法少女が持ってそうな杖で、サイズ感も丁度良いのだ。

「へぇ、芣婭ちゃんぽいなぁ」

「芣婭様ぽいですね」

パパ作の杖を見たニックとレヴァさんの声が重なり、思わず声を漏らして笑ってしまう。

「ふふっ」

「どうしたんですか?芣婭様、急に笑い出したりして」

「だって、レヴァさんとニックが同じ事思ってるんだなって。ごめんね?笑ったりして」

「い、いえ、本心を言っただけなので…、貴方の笑顔が見られて良かった」

「え!?そんな事言ってくれるなんて嬉し!ありがとっ、レヴァさん」

芣婭の言葉を聞いたレヴァさんは顔を真っ赤にして、ものすっごく恥ずかしそうにしてる。

レヴァさんって確か、女の子が苦手なんだっけ?

話してる時もよく真っ赤になってるし、芣婭と話すのは平気そうだけど、少しは心を許してもらえてるって事だよね。 

「今日の稽古は、ギルベルト様も参加する。最近、たるみ切った根性を叩き直してもらえ」

「「「えっ、えぇぇぇ…」」」

「そう言う訳だから、今日の稽古は気合入れろよー」

「はーい、分かりましたぁ!」

「「「えっ!!?」」」

コンラットに向かって返事をすると、団員さん達が芣婭の方に一斉に視線を向けてきた。

「え?変な事言った?」

「ハハッ、良いんだよ芣婭。今日は俺と一緒に魔法の稽古しような」

「分かったー!」

「「「だ、団長が優しい…」」」

芣婭とコンラットの会話を聞いていた団員さん達は、
またしても驚いている中、白のワイシャツに黒ズボンと言ったシンプルな服装をしたギルベルト君が練習場に入って来る。

あー、芣婭の彼ピがいっちばんカッコイイ♡

第二ボタンまで開けられたシャツから鍛えられた筋肉いが覗き、白い肌から男らしい血管が浮き上がっていて、なんなら腕なんか血管が浮き出てるし。

ギルベルト君の呪いの影響で刻まれた黒い棘と融合するように咲いたピンク色の薔薇、あれを見る度にギルベルト君が芣婭のモノなんだって実感してしまう。

「芣婭ちゃん、芣婭ちゃん!」

「えっ!?な、何?」

「俺達は模擬戦しに行っちゃうから、一旦解散しちゃうよって言ってたんだけど…。驚かせちゃってごめんな」

「ごめんごめん、ちょっと妄想しちゃってた!模擬戦って、何?」

「一対一で木刀や剣を使って、戦ったりする事かなぁ」

ニックの話を聞いて、アニメに出て来る騎士達の練習風景が浮かび、2人は本当に騎士なんだって実感した。

「おーい、芣婭ちゃーん!」

背後から声をかけられ振り向くと、満面の笑みのヒューズが走ってくるのが見え、ニックとレヴァさんは模擬戦をする団員さんの所に向かって行く。

「あ、ヒューズ」

「芣婭ちゃんは俺等と一緒に魔法の特訓しに行こ!ギルベルト様も一緒だからさ」

「そうなんだ、分かった」

「ギルベルト様から聞いたんだけど、本当にギルベルト様と交際を始めたのって、いでででで!!?」

芣婭に近付いて来たヒューズの耳を、付いて来てくれていたシーちゃんが乱暴に引っ張る。

「おい、ヒューズ。芣婭様に無用に近付くな、お前の馬鹿が移るだろうが」

「ちょっ!?馬鹿って何ですか⁉痛いじゃないっすか‼」

「さっきから芣婭様のお足を見てただろ、鼻の下を伸ばしやがって」

「そ、そんな事あるわけないじゃないですかぁ、あはは…」

ヒューズが冷汗をかきながら言い訳をしていると、ギルベルト君とコンラットが芣婭達の事を迎えに来てくれた。

「芣婭」

「ギルベルト君!今日はよろしくね!」

「あぁ、やはり俺の練習着だと大きいな。不便じゃないか?」

「全然!これが可愛いんだから、大丈夫!はやく魔法やりたい!」

「フッ、分かった。試し打ちから始めるか」

ギルベルト君は芣婭の手を握って、木で作られた人形が配置されている場所に移動すると、ローさんとエリっちの2人が芣婭の事を待っていてくくれたらしい。

この木の人形に向かって、魔法を投げつける感じ?

「芣婭、アンタ魔法は使った事ないんでしょ?自分の属性とか分かってるの?」

「あ、昨日パパに教えてもらったよ!エリっち、どの属性だと思うー?」

「え、何このうざいノリは」

「うざいってひどくない⁉もうちょっと、ノリに付き合ってもらっても…」

「もー、分かったってば!だから、そんな子犬みたいな顔すんな‼」

エリっちは芣婭の顔を見ながら怒ると、ローさんがエリっちの頭を優しく撫でる。

すると、エリっちの尻尾が小さく揺れて、耳もぺしゃんとなって顔も少し赤い気がした。

あれ、エリっちってもしかして…?

「悪いな、芣婭様。コイツ、女の子の友達いないからさ。仲良くしたいのに、どうしたら良いのか分かんないだけなんだよ」

「なっ⁉何、余計な事言ってんのよ!あ、あたしは別にっ、な、仲良くしたいなんて思ってないけど!?」

「あー、分かった分かった。もうちょい素直になったら可愛いのに」

「アンタに可愛いなんて思われなくたって良いし!って、何ニヤニヤしてんの芣婭!!!」

ローさんとエリっちの会話を聞いてただけだけど、どうやらニヤニヤしてしまっていたらしい。

「はいはい、喋るにはこの辺で。芣婭が魔法の練習が出来なくなるだろ。それで?芣婭の属性は何だ?もしかして、光属性とかか?」

「ぶー!!!違いまーす、正解は闇属性でしたぁ!ちょっと、カッコよくない?闇属性ってさ」

「闇属性か、俺と同じだな芣婭」

コンラットと話していると、ギルベルト君が芣婭の肩を抱きながら会話に入ってくる。

「そうなんだ!あれ?ギルベルト君、氷の魔法も使ってなかった?」

「あぁ、俺は闇属性と氷属性、2つの魔力が体の中に流れてる。実際に見てないと分からないよな?こんな感じだ」

ギルベルト君はそう言うと、手のひらに浮かんだ魔法陣の中から紫の炎を纏った氷の結晶が現れた。

「すごっ!氷と闇属性の炎が同時に出た‼しかも、呪文も言ってないのに」

「簡単な魔法なら、呪文なしでも使える」

「へー!芣婭も使ってみたい!」

「分かった、コンラット見本を見せてやれ」

「分かりました、では…」

コンラットは木の人形の方に向かって手を伸ばし、「行け」と呟くと赤色の魔法陣の中から炎が現れ、真っすぐ直線に飛んで行く。

ゴォォォッ!!!

飛ばされた炎は木の人形に当たるが、燃えるどころか無傷の状態だ。

「あれ?人形が燃えてない」

「あの人形には防御魔法が掛けられていて、滅多な事がないと壊れないようになってる。ここでは、魔法の特訓もしているからな」

「お、おい、お前っ!大丈夫か!?」

「誰か、ミラを呼んできてくれ!!!」

コンラットから説明を受けていると、団員さん達の騒ぎ声を聞いて駆け寄る。

団員さん達に囲まれていた傷だらけの獣人の少年は、ギルベルト君の姿を見て泣き出す。

「何があった」

ギルベルト君は獣人の少年の視線に体勢を合わせると、獣人の少年はギルベルト君に縋りながらこう言った。

「ガゼルをっ、助けて下さいっ、ギルベルト様!!!」

言葉を放った瞬間、獣人の少年はその場で意識を失った。