ギャルが異世界にトリップしたら、暗殺一家の大公子とスパダリ婚する事になりました

甘野芣婭達が魔界を後にした頃、カーディアック家の客間にはランスロットとコンラット、ギルベルト自身を含んだ3人がワインを飲んでいた。

ジャンゼン家を飛び出して行ったギルベルトは、早々に現皇帝ガルシアに報告をし、ランスロットから話を聞くべく客室に案内したのだが…。

テーブルの上にはワインのお供になるチーズや生ハムを巻いたメロン、クラッカーなどが並べられ。ワインは既に2本開けられている。

ギルベルトが帰宅してから1時間が経過しているが、ギルベルトが聞きたかった話をランスロットはしてこない。

「おい、ランスロット。俺が帰ってきたら、話すって言ってたよな?コンラットも呼び出して、何がしたいんだ?お前は」

ワインを口に運びながら、ギルベルトはランスロットを睨み付ける。

「良いじゃないか、それにね?ギル。コンラットの頬の傷は、君のお姫様を守る為に出来たもらしいじゃないか」

「ランスロット様、どこかで見ていらっしゃたのですか?」

「皇太子殿下が中部街で大騒ぎしてたら、目にも留まるだろう?俺の妹が君達の間に入って行ったから、その場から去ったけどな」

「コンラットが中部街で何かあったか、ニックスとレヴァリオから聞いた。芣婭の事を身を挺して守ったと」

コンラットの手当てされた頬を見ながら、ギルベルトは言葉を吐く。

「ランスロット、皇太子が芣婭にちょっかいをかけている話をしろ。話をする為に来たんだろ?」

「ニックス達が君に報告した通りの内容だよ。君のお姫様がロールベルク公爵が経営している魔法省に行った時、皇太子殿下が謎の女と秘書のアズバルトを連れて来ていたそうだよ」

「謎の女と言うのは、異世界から来た光の姫(ライトプリンセス)の事か」

「光魔法の事を勉強させようと思ったから連れて来たのか、お姫様が来る事を分かっていたから来たのか、この2つのうちどれかだと思う。皇太子殿下は、異世界人のお姫様の事を一目惚れしたようだ」

そう言って、ランスロットはワイングラスを傾け、ワインの香りを楽しむ為に軽く揺らす。

ギルベルトが苛々しなながら煙草を咥えると、コンラットはすぐにマッチを取り出し、着火させてからギルベルトが加えた煙草に火をつける。

「コンラット、お前も普段は吸うだろ。今日は俺の事は気にせずに吸っていい、吸えと言った方が吸いやすいか」

「ギルベルト様っ、しかし…、2人の前で吸うのは…」

「良いじゃないか、黒騎士団(ブラックナイト)団員達の殆どが喫煙者だろう?お前も僕の友人だ。な?コンラット」

「そうですね、お心遣い感謝致します。では、失礼します」

ギルベルトとランスロットに軽く頭を下げてから、コンラットは騎士服のジャケットの胸ポケットから煙草を取り出し、慣れた手付きで煙草を咥え火をつけた。

少し煙を吸ってから白い煙を吐き出し、コンラットに煙草を吸っている姿は上品だった。

「皇太子殿下に担架を切ったんだって?温厚の君が怒るのも珍しい、ギルベルトのお姫様の事がよほど大事なんだね?コンラット」

「カーディアックに仕えている身でありながら、軽率な行動を取ってしましました。申し訳ありません、ギルベルト様」

「芣婭を守る為にとった行動だろ、お前が謝る事じゃない。皇太子はお前の事を毛嫌いしている節があるだろ、どんな行動をとったとしても奴は気に入らないだろ」

頭を下げようとしているコンラットを手で静止させ、話しながら皇太子のルカリオの顔を思い出す。

「皇太子殿下は芣婭…、いや芣婭様の好きな食べ物や色、香りの事を彼女の前で熱弁していました。皇太子殿下の口振りからして、嘘を言っているような感じではありませんでしたね。ロザリア様が芣婭様とギルベルト様が良き関係だからと見合いの話を断りました
が、奴は芣婭様の事を諦めてはいませんね」

「お姫様に執着してるんだったら、マダムの言葉は皇太子の逆鱗に触れちゃうねぇ」

「はい、芣婭様が怯えているのに近付こうとするぐらいです。彼女が俺の事を心配しているのも、皇太子殿下は気に喰わなかったんでしょう」

「その日の夜に家に来るぐらいだしねぇ」

「はぁ!?家に来たって…、皇太子がロールベルク家に来たって事か!?何しにだ!!!」

ギルベルトの大声を聞いたランスロットとコンラットの2人は目を丸くして驚いた。

感情を一切、表に出して来なかった男が、甘野芣婭と言う1人の女性の事で感情を出した事に驚いていたのだ。

「おい、何だその顔は。俺の顔に何か付いてんのか」

「いやぁ、ギルが感情を露わにした所を初めて見たからさ…?コンラットも僕と同じ顔してるだろ?」

ランスロットに言われてから我に帰ったギルベルトは、自分自身の言葉と行動を振り返り呆然としてしまう。

今まで生きてきた中で、ギルベルトは誰かに足して感情を出した事なんてないし、これからもないっと思っていたが甘野芣婭と出会ってから変わってしまった。

「まぁ、皇太子がロールベルグ家に訪れる事は、母上が占って分かっていた事だったし?妹と母上がロールベルク家に訪れて、皇太子の事を早々に追い返したって」

「イルミナ公爵が自ら?」

「母上は相手が皇族だろうが関係ないからね、皇太子の高くなった鼻でもへし折ったんだろ。皇帝は息子の事も大切だけど、我がイーヴェル家を手放す事は出来ない」

「公爵が軍事に参加していなかったら、白騎士団(ホワイトナイト)達は様々な戦争で勝ちを得られていなかった。ルナ帝国に攻めてきていた国が(いく)つかあったが、今ではどの国からも恐れられる国となった訳だしな」

ランスロットとギルベルトの2人の会話を聞きながら、空になったグラスの中にワインを注ぐ。

「ギルさぁ、首元から見えるピンク色の薔薇って、新しく入れたタトゥーじゃないだろ?お姫様に治してもらったんでしょ?」

「お陰様で、感覚がなかった右手に感覚が戻ってきた。芣婭には感謝してもしきれない」

「皇太子にお姫様が取られたらどうすんの?ギルが何もしないまま、皇太子のモノになっちゃたらどうすんの?」

「…」

「皇太子がお姫様にちょっかいをかけられたら、感情を露わにして怒ったじゃないか。それが君の本心なんだと、僕は思うよ」

シュンッ!!!

カチャッ。

ギルベルトが答えを出すのに迷っていると天井に紫色の魔法陣が現れ、コンラットは瞬時に腰に下げていた剣を抜き、戦闘態勢に入るが、魔法陣の中から出て来た人物達を見て驚く。

「わー!!!」

「芣婭!?」

「えっ、ギルベルト君!?お、落ちるっ!!!」

床に落ちそうになった甘野芣婭をギルベルトは抱き締めてキャッチし、2人してそのまま床に倒れ込んだ。

***

甘野芣婭 (17歳)

バフォさんが指を鳴らした瞬間に足元に大きな穴が開いて、それから何故かギルベルト君がいる部屋に落ちてきて…?

落ちそうになった芣婭の事をギルベルト君が受け止めてくれて、そしてそして?

普通はお家に帰してくれるものでは?

ギルベルト君のお家なんだと思うけど、ちょっと気ま
ずい感じでバイバイした相手と会うのは気まず過ぎる!!!

顔上げにくいんだけど…、上げない訳にもいかないし、どしよ!!!

「大丈夫か?芣婭」

「う、うん、大丈夫だよ?ご、めんね?いきなり落ちてきて?」

ちょっ、疑問形で返しちゃったよ!?

いやいや、実際に分かんないんだよ!!!

何で、ギルベルト君のお家に帰って来ちゃったのか、こっちが聞きたいくらいなんですけど!!!

「ジオン様まで、どうして天井から?どう言う状況なんですか?これは」

ハウラスの腕の中で眠っているジオン君を見たコンラットは、状況が呑み込めないでいた。

そりゃそうだ。

すぐに今の状況が理解出来たら、東大に行けるよ。

「俺達は別宅に帰る」

「え?あ、ちょっと…」
「芣婭、じゃあな」

コンラットの言葉を無視して、ハウラスは芣婭に別れを告げてから部屋を出て行く。

マイペースだな、ハウラスって。

「バフォメットの野郎、目的地を適当に設定しやがったな」

「え、目的地を設定?ナビ設定が出来るの!?」

「移動魔法が使える奴はな、俺等も使えんぞ」

「ケロちゃんもベロちゃんも賢いんだねぇ」

ベロちゃんと話ていると視線を感じて見てみると、ワインレッド色の丸サングラスを掛けたお兄さんが椅子に座っている。

雰囲気からして、このお兄さんもイケメンさんなんだろう。

マジで、この世界の男の人達ってカッコイイ人多過ぎやしませんか?

「もしかして、この子がギルのお姫様?」

「お、お姫様?芣婭の事?」

「これは皇太子も執着しちゃうなぁ」

「へ?」

「あぁ、ごめんね?いきなり、ジッと見られたら困っちゃうよね?僕はランスロット・イーヴェルだよ、宜しくね?芣婭ちゃん」

イケメンお兄さんの名前を聞いて、この人がヴィオちゃんのお兄さんだってすぐに分かった。

ニック達が嫌な顔してたけど、性格が悪そうには見えないけどなぁ。

「ギルもうかうかしてたら、本当に取られちゃうからね?良いの?」

「チッ、お前に言われなくても分かってる」

ギルベルト君はイケメンお兄さんに向かって舌打した後、芣婭に視線を向けながら口を開く。

真剣な眼差を向けられ、心臓がキュウッと締め付けられる。

ドキドキッと鼓動が早まり、ギルベルト君が話し出すのをゆっくりと待つ。

「少しだけ、2人で話せないか?芣婭が良ければなんだが」

「「は!?」」

ギルベルト君の言葉を聞いたケロちゃんとベロちゃんの声が重なり、あからさまに嫌そうな顔をする。

「まー、まー、悪魔の2人は僕達と一緒に、ワインでも飲もうよ?ほら、ワインのお供があるよ?」

「いきなり何んだよ、お前!!!」

「君達、普段はずっとお姫様の側に居るんでしょ?だったら、少しはギルに時間を分けてやってよ。ほらほら、ギル達はさっさと部屋を出てー」

「なっ!?勝手に話を進めんな!!!サングラス野郎!!!」

「ごゆっくりー」
 
イケメンお兄さんはベロちゃんをあしらいながら、芣婭とギルベルト君の背中を押して部屋の外に出されてしまった。

パタンッ。

「「…」」

少しの沈黙が流れた後、ギルベルト君が手を差し出してくる。

「屋敷の裏に大きな池があるんだが、ボートに乗るか?」

「ボート?良いね、夜のボート楽しそう!」

「フッ、じゃあ行こうか」

「うん」

自然な流れで手を握られ、芣婭達はギルベルト君に案内されて池に向かう事になった。

玄関を抜けて裏手に回ると、地面に大理石が池への道案内をしているように並べられていて、周りの木々達にはランプが灯されている。

ギルベルト君は芣婭の小幅に合わせてゆっくり歩き、明るく照らされた木々達の中を進んで行くと、月夜の光を独り占めしている大きな池が姿を現した。

池の周り咲いているパンジーの花達が芣婭達をで迎
え、2人用のボートが置かれている乗り場まで歩く。

「すっごい、綺麗だねぇ。ファンタジーって感じがして良いね」

「気に入ったか?」 

「うん!連れてきてくてありがと、ギルベルト君」

「芣婭が気に入ってくれたなら良かった」

ギルベルト君はそう言って、先にボートに乗り込み、芣婭の手を引いてゆっくりボートに乗せてくれる。

芣婭の世界にある細いボートではなく、2人用なんだけど漫画で見た事があるお洒落なボートだった。

「月が近く見れる場所まで行こう」
 
そう言って、ギルベルト君はポドルを握って漕ぎ始めてくれたので、芣婭は周りの景色に視線を視界に捉えていく。

本当に素敵な場所、デートスポットに何か所か連れてってもらった事があるけど、ここまでロマンチックな場所はなかったなぁ。

今の芣婭はドレスを着てるんだけど、ギルベルト君の目から見てどうう写ってるのかな。

似合ってるって思ってくれてる?

「ドレスに着替えたんだな、よく似あってる」

「本当?へへっ、ギルベルト君に褒められると嬉しい。ケロちゃんとベロちゃんが着せてくれたんだぁ」
 
「綺麗だ、この世で1番」

まっすぐ見つめられながら褒められると胸が苦しい。

どうして、この人は芣婭が欲しい言葉を言ってくれるんだろう。

心の中を見られているような、見透かされているような、そんな感じがして恥ずかしい。

昼間、ギルベルト君にした態度の事を謝らないといけないと思い、ドレスの裾を掴みながら口を開く。

「ギルベルト君、お昼の時さ?変な態度をとってごめんね」

「…、俺も見送るって言ったくせに、行かなくてごめん」

「どうして、来てくれなかったの?が変な態度をしたから?」

「違う、芣婭は何も悪い事をしてない。俺が…、俺自身が芣婭に触れてはいけないと思ったからだ」

「言いにくい話だよね?きっと…」

話をしていると、いつの間にか月が綺麗に見える場所に到着していた。

眩しいくらいの月の光が芣婭達を照らし、ギルベルト君の表情がよく見える。 

凄く悲しそうに口角を上げて、恨めしそうに自分の手に視線を落とし、言葉を選んでいるようだ。

ギルベルト君が何に悩んで苦しんでいるのか分からない。 

もしかしたら、芣婭に話をしたとしても解決できる問題なんかじゃないのかもしれない。

「ギルベルト君」

名前を呼びながらギルベルト君の手に触れ、話そうとしてきたので両手で包み込む。

「芣婭、手を…」

「ギルベルト君がどんな人でも、芣婭は嫌いになったりしないよ。絶対に嫌いになったりしなよ」

「俺は芣婭が思っているような優しい人間じゃないよ。この手は多くの者の血で汚れてる」

「血で汚れてる?」

「…、カーディアック家は代々、暗殺を生業としてきた家だ。皇帝の命令に従って、暗殺の仕事を遂行してきた。俺自身も何人、いや、何十人も殺してきたよ。血で汚れた俺が、真っ白な芣婭に触れてはいけない」

ギルベルト君はすごく苦しそうに話し、芣婭の事を見ないようにしている。

昼間に会った王子様の態度が脳裏を過り、国のトップから命令されたら民の人達は断れない。

誰が悪いのかって言われれば、悪いのはこの国の皇帝様達だ。

「ギルベルト君は汚くないよ、ギルベルト君は汚くなんかない。だって、ギルベルト君は自分から殺そうって思ってないないでしょ?皇帝様?の命令で仕方なく
でしょ?」

「そうだが…、人を殺して来た事実は変わらない。これからも、命令が下れは行かなければならない時もある。俺自身が血で汚れた状態で、芣婭の前に現れたくないんだ」

「許せない」

「芣婭?」

「ギルベルト君の事を苦しめる皇帝様が許せない!くっそー!どうにか出来ないのかな?皇帝様の性格を叩き直すしかない?代わりの人は…って、あの王子様しかいないな…。どーしよ…」

芣婭の言葉を聞いたギルベルト君は、声を漏らしながら笑い出す。

「クッ、ククッ」

「あっ、何で笑うの!!!芣婭が真剣に考えてるのにっ」
「だって、芣婭の怒り方が可愛いからっ。俺の事で怒ってくれてるのも嬉しい」

「うっ、そんな事言われたら怒れないな…」

ギルベルト君が少年のように笑うから、何も言えなくなってしまった。

さっきまでの表情は消えて、何か吹っ切れたようなスッキリと表情になっていく。

「昼間の事、コンラット達から聞いた。皇太子が芣婭の事を狙ってるって」

「あー、お見合いの話をきてきたんだよね。ママが断ってくれたんだけど、王子様がね?ママにも、コンラットにも酷い事をしたの」

「皇太子も自分の思い通りにいかないと気に入らない。だが、芣婭の事を渡したくなって思ってる。前に気持ちも聞いていないのに、他の男のものになるのは許せないと、思ってしまっている」

「ギルベルト君…」

「芣婭が許してくれるなら、こんな俺の事を側に置いてくれないか」

ギルベルト君、もうそれは告白に近い言葉だよ?
目を見れば、芣婭の事が好きなんだって分かってしまう。

芣婭達は両想いで、どちらかが告白したら付き合える状態なのも分かってる。

分かっているけど…、ギルベルト君の口から聞きたいのはわがままかな。 

「それって、ギルベルト君は…。芣婭の事が好きって事?」

「…、こ、ここまで言っても分からないか?」

「分かるけど…、ギルベルト君の口から聞きたいの。だめ?」 

ギルベルト君の頬がどんどん赤くなっていき、照れているのが分かる。

可愛い、芣婭の言葉を聞いて赤くなってるのも恥ずかしがってるのも可愛い。

「好きだ」

ブワッと全身に熱が回り、体中が一気に熱くなっていく。 

すぐにでもギルベルト君に抱き付いて、キスしたい。
ずーっと側にて、イチャイチャしたいくらい好きで好きで堪らない。

「初めて会ったあの日から、俺は芣婭に一目惚れしてしまった。今まで生きてきて、一目惚れした事もなければ好きになった事もない。その、俺の本心を話したんだが…」 

「ふふふっ、ギルベルト君は芣婭のお願いを聞いてくれるんだね?」

「芣婭の願いなら、何でも答えてやりたい。おい、話を逸らそうとしてな…」

チュッ。 

衝動が抑えきれなくなり、芣婭はギルベルト君に近付いて唇を塞いだ。

動いた所為でボートが軋む音が響き、ギルベルト君はすっごく驚いてる顔をしているので、もう一回キスをする。

チュッ。

「芣婭も、ギルベルト君が好き、大好き」

「お前は本当に狡い女だ、俺の心を簡単に搔き乱す。俺の事をどうしたいんだ?」

「もっと好きになってほしい、芣婭の事」

「はぁ…、本当に狡い女だよ…。こんな事されたら、歯止めが利かなくなる」

そう言って、ギルベルト君は芣婭の事を抱き寄せると、ボートが再び軋む音が響き渡っていく。

力強く抱き締められて、芣婭の顔を覗き込んできては唇を塞がれ、何度も何度も芣婭達はお互いの唇を求めた。 

「んっ…」

「好きだ、芣婭。どうしようもなく、お前の事が好きだ」

重ねていた唇が離され、ギルベルト君は真っすぐ芣婭の事を見て気持ちを伝えてくれる。

今まで付き合ってきた彼ピ達の事を思い出し、芣婭自身がかなり重い事をギルベルト君に伝えていなかった。

こんな事を言ったら、ギルベルト君は変わらず芣婭の事を好きでいてくれるかな。

「あ、あのね?芣婭、かなり重いよ?毎日好きかどうか確認するし、束縛だってする。かなりヤキモチ妬きだけど良いの?」

「それのどこが重いんだ?」 

「え、毎日聞くんだよ?お、重くないの?」

「全然、芣婭を不安にさせないようにしたい」

ギルベルト君は今まで出会ってきた男の人達と違う。

今までの恋愛とは比べ物にならない恋愛が始まりそうで、心臓が持つかどうか不安だ。

「芣婭、他にも悩みがあるだろう?昼間、お前の表情を曇らせていた」 

「元の世界にいるお兄ちゃんの事が気がかりで、あっちの世界だとさ?芣婭は行方不明になってると思うんだ。帰りたくなって気持ちと、お兄ちゃんに心配かけたくない気持ちがあって…」

「家族の事を思う気持ちがあって当然だ、母君と父君から芣婭を守ってきたんだろ?何も悪い事じゃない。俺の身勝手な気持ちを言うとな、芣婭の事を帰したくない」

「芣婭もね?ギルベルト君と離れたくないよ」

「提案なんだが、2人で行き来する方法を見つけないか?」

ギルベルト君から予想外の提案をされて、思わず目が点になってしまう。

「そ、その発想はなかったっ。ギルベルト君、天才すぎない?」

「俺が芣婭の事を話したくないだけなんだが…。芣婭と同じく、俺も独占欲が強いだけだ」

「重いのは大歓迎!この国一のカップルになろ!!!」

「ハハッ、芣婭と居るだけで新鮮な事ばかり起きるな」 

そう言いながら、思いっきり抱き付いた芣婭の事を抱き留めてくれた。

***

同時刻、宮廷の王座ではガルシアの怒鳴り声が響き渡り、ルカリオは何も言い返せなかった。

「何を感がてるんだ、お前は!!!エルミナに見限られたら、どうしてくれるんだ!!!」

「申し訳ありません、父上」

「新たに国の侵略計画を立てている事は知っているだろ!?エルミナの力なしでは叶わなくなるだろ!?エルミナから連絡鳥が送られ、お前が中部街でしでかした事も聞いた。勝手な行動はするなと言っただろ!!!」

「…、申し訳ありません」

ガルシアの言葉など、ルカリオには何も響いていない。

彼の中には怒りの炎が燃え上がり、自分の父の考えに聞く耳を持っていないのだ。

「暫く、宮廷から出る事を禁止する。今日はもう下がれ」
「失礼します」

舌打ちをするのを我慢して、ルカリオは王座を後にし、乱暴な足取りで廊下を歩いていると前から知らない男が歩いてくる。

「誰だ、お前」

「やぁ、王子様。僕と少し話さないかい?」

窓から漏れた月夜の光に照らされ、ルカリオの前に現れたのは不敵な笑みを浮かべたアスタロトだった。