「あ、ごめんなさい。そろそろ行かないと」
断腸の思いで席を立った。
「そうですか、残念です。今度は是非夜のお食事をゆっくりと。
夜でしたら接待費も使えますから、もっと高級なレストランご案内できますし」
「もしかして、ここ、自腹ですか?」
「気にしないで下さい」
「そういうわけには行きません。おいくらですか?」
「いえ、本当に、僕が一方的に誘いましたから、いいんですよ」
「でも…」
「その代わり、是非またご一緒させてください」
しばらく悩んだけど、時間も過ぎてるし、お礼を言って店を出た。
レジを通り過ぎる時、チラッとメニューの看板をチェックすると、ランチは2500円からとなっていた。
仕事相手だからここまでしてくれることはわかっていても、とっても気分が良かった。
田川さんと楽しいランチを終え、上機嫌で会社に戻った。
フロアに入ったとたんに、坂下さんが駆け寄ってくる。
「有賀さん、どこへ行っていたんですか?
フジ工房の北川さん、ずっとお待ちですよ」
「田川さんと打ち合わせが長引いてしまったのよ。どこにいるの?」
「第二ブースでお待ちです」
「わかったわ」
時計を見ると1時20分。
騒ぐほどの遅刻じゃないわよ。
こっちは仕事回してる得意先なんだから、これくらい黙って待たせておきなさいよね。
私は急いだんだから。
本当は、もっとゆっくりしたいのを我慢して、急いで来たんだから下請けには感謝してほしいくらい。
ホント、この子って、どうでも良いことばっかり細かいのよね。
大事なのは如何に商品を売るか。
そのためには、多少下請け待たせたってどうってことない。
全くわかってないんだから。
やっぱり、派遣は所詮この程度よね。



