天才プログラマー理花のスマホ事件簿

 街を歩いていると、大きな液晶画面にミラクルボックスという文字が表示された。
 子どもたちは思わず顔を見上げて、広告に夢中になっている。そういうあたしもその仲間。
 ミラクルボックスっていうゲームが大好きで、休みの日は一日中遊んでいる。
 現実では地味な女の子だけれど、ゲームの世界ではめちゃくちゃおしゃれな女の子に大変身!
 自分でデザインした洋服を着せて、友達が作ったゲームを世界中のプレイヤーと遊んでいる新しいゲーム、それが『ミラクルボックス』だ。

「おーい、理花ちゃんっ!」

 ミラクルボックスの広告が終わると、交差点の向こうから友達で同じ小学四年生の藍沢萌(あいざわもえ)ちゃんに声をかけられた。

「今の広告、理花ちゃんが得意なゲームだね!」

 クラスのキラキラ女子である萌ちゃんが地味なあたしの友達って不思議かもしれないけれど、萌ちゃんとは幼稚園の頃からのオタク仲間だった。パパやママが見ていたような何十年も前のアニメから、最新のアニメまでお互い大好き!
 特に魔法少女ものが好きで、ゲームの世界のアバターも萌ちゃんとあたしはお揃いの魔法少女のコスプレをしていた。萌ちゃんが白で、あたしは黒。

「あたしの夢はさ……ゲームを作る人になることなんだ。プログラマーっていうのかな。ミラクルボックスはそのための勉強でもあるんだ」

「すごーいっ! じゃあ、わたしはイラストレーターになって、理花ちゃんのゲームのキャラをデザインをするよ!」

「萌ちゃんは絵が得意だもんね。クラスでもトップじゃないかな。いいな。あたしは絵が下手くそだよ……ミラクルボックスの洋服デザインも萌ちゃんがやってくれたもんね」

「作ったのは理花じゃん! 作る方がすごい才能だって! わたしにはゲームの洋服なんて作れないもんっ!」

 ふたりで並んで歩きながら、アクセサリーショップを回る。子ども向けの安い雑貨屋さんみたいなお店だ。可愛い文房具なんかも売っていて、同じ小学校の生徒と出くわすことも多かった。

「あらあら、藍沢さんと白石さんじゃない」

 雑貨屋さんで出会ったのはクラスでも一軍、絶対的お姫様に君臨する野絵留(のえる)ちゃんだった。今日だってウェーブのかかった長い黒髪が可愛いし、女子の味方も多い。

「宿題の将来の夢は書けた? わたくしは一流企業に入ってカッコよくてお金持ちのお嫁さんになるって書いたわ!」

 あたし達はふたりそろって苦笑いをする。ノエルちゃんらしい夢だ。あたしたちみたいな子供っぽい夢じゃなくて、ノエルちゃんは大人みたいな夢を持っている女の子。

「わたしはイラストレーターって書いたよ」

「まあ、イラストレーターなんてごく一部の天才でないとなれないのよ? 萌さんは頭が良いですし、勉強を頑張ってみた方がいいんじゃありませんか?」

「勉強も頑張るけど、イラストも頑張る。両立するよ」

 萌ちゃんはノエルちゃん相手にも堂々と夢が言えてかっこいいな。

「白石さんは?」

「えっと、あたしは……その……」

 あたしには自分の夢を他人に話せるような度胸がなかった。だから地味な女の子。ゲームのプログラマーだって誰でもなれる職業じゃないもんね。でも、なれたらいいな……。

 そんな時だ、あたし達三人のスマホが青白く光り出した。

「な、なにこれっ!?」

 あたしの叫び声と共に、三台のスマホが雑貨屋さんの床に転がる。

……うーん。

 目が覚めたあたしは驚いた。あたしが着ている洋服がミラクルボックスの魔法少女のゴスロリ黒ドレスだったから!
 おまけに髪型も変わって腰まで伸びた長い黒髪になっている。
 これって、理想の自分ってこと!?
 どうなってるの?

 何もわからないまま、あたしは周囲を見回した。

 世界が壊れていた……。

 真っ白な空白の世界。落ちたらどうなるのだろう?
 背後は森になっていた。ミラクルボックスの世界と同じ四角いブロックが積み重ねられて作られた木の森。

 もしかして、あたしってミラクルボックスの世界に来ちゃったの!?