ずっと隣にいた君が、遠くなった春

 十二月二十四日。

 クリスマスイブ。

 朝から、陽菜乃は何度も時計を見ていた。

「まだ二時……」

 待ち合わせは午後四時半。

 あと二時間以上もある。

 それなのに、机に向かって冬休みの宿題を開いても、まったく頭に入ってこなかった。

 数学の問題を一つ解いて。

 時計を見る。

 英単語を三つ覚えて。

 また時計を見る。

「陽菜乃」

「きゃっ!」

 部屋の扉から顔を出した姉の結衣に呼ばれ、陽菜乃は肩を揺らした。

「びっくりした……」

「こっちがびっくりするよ。さっきから時計ばっかり見てるけど」

「見てないよ」

「見てる」

 結衣は笑いながら部屋へ入ってきた。

 ベッドの上には、今日着ようと思って用意した服が並べてある。

 白いショートコート。

 淡い水色のニット。

 チェック柄のスカート。

 そして、陽菜乃が昨日まで悩みに悩んで選んだ小さなバッグ。

 結衣はそれを見て、楽しそうに眉を上げた。

「気合い入ってるね」

「そ、そんなんじゃないよ!」

「今日は水野くんと二人でイルミネーションなんでしょ?」

「……うん」

「それを世間ではデートって言います」

「だから……!」

 否定しようとして。

 陽菜乃は途中で言葉を止めた。

 昨日までは、

『デートじゃない』

 と何度も言っていた。

 でも。

 本当にそうなのだろうか。

 二人きりで。

 クリスマスイブに。

 イルミネーションを見に行く。

 しかも陽菜乃は、今日のために昨日から服を考えている。

 髪型だって。

 いつものように結ぶか、下ろすか。

 何度も鏡の前で試していた。

「……やっぱり、デートなのかな」

 小さくつぶやく。

「やっと気づいた?」

「お姉ちゃん!」

 陽菜乃は恥ずかしくなって、近くにあったクッションを抱きしめた。

 結衣が楽しそうに笑う。

「で?」

「何?」

「水野くんのこと、好きなの?」

「……!」

 陽菜乃の顔が一気に熱くなった。

「そ、それは……」

 答えられない。

 少し前までなら。

 すぐに、

『私が好きなのは湊だよ』

 と言えた。

 ずっとそうだった。

 幼い頃から。

 陽菜乃の初恋は、ずっと湊だった。

 でも最近。

 柊真のことを考える時間が増えた。

 学校へ来なければ寂しい。

 誰かと楽しそうにしていたら気になる。

 自分の好きなものを覚えていてくれると嬉しい。

 そして。

 クリスマスに二人で出かけようと誘われた時。

 すごく嬉しかった。

「……分かんない」

 陽菜乃は正直に答えた。

「でも」

「うん」

「今日は……すごく楽しみ」

 結衣の表情が少しやわらかくなる。

「それでいいんじゃない?」

「え?」

「無理に答え出さなくても。今日一日、一緒に過ごしてみれば?」

「……うん」

 陽菜乃は小さくうなずいた。


 午後四時十五分。

 待ち合わせ場所の駅前。

 陽菜乃は大きなクリスマスツリーの近くで、落ち着かない気持ちのまま立っていた。

 空はすでに暗くなり始めている。

 駅前の木々には、小さな電飾が灯り始めていた。

 白。

 青。

 金色。

 冷たい冬の空気の中で、光だけがあたたかそうに輝いている。

 近くを通る人たちも。

 恋人同士。

 友達同士。

 家族連れ。

 みんな楽しそうだった。

「……早く来すぎた」

 待ち合わせの十五分前。

 昨日、

『遅刻しないようにしなきゃ』

 と思いすぎた結果だ。

「寒い……」

 陽菜乃は手に息を吹きかけた。

 今日は手袋を持ってきている。

 でも。

 バッグの奥に入れたままだった。

 なぜなら。

 少し緊張していて、出すことまで忘れていたから。

「陽菜乃」

 聞き慣れた声。

「え?」

 顔を上げる。

「柊真くん!」

 少し離れたところから、柊真が歩いてくる。

 黒いコート。

 グレーのマフラー。

 いつもの制服姿ではない。

 それだけで。

 知っている男の子なのに、少し違って見える。

(……かっこいい)

 そう思った瞬間。

 陽菜乃は慌てて視線をそらした。

「待った?」

「ううん。私も今来たところ」

「嘘」

「えっ」

「手、めっちゃ冷たそう」

 柊真が陽菜乃の手を見る。

「あ……」

「何分待った?」

「十五分……くらい」

「早すぎ」

「遅れたくなかったの」

「俺も遅れねえよ」

 柊真は少し笑った。

 そして。

 陽菜乃を上から下まで見る。

「……」

「な、なに?」

 急に意識してしまう。

 今日の服。

 変じゃない?

 髪。

 おかしくない?

 考えているうちに、どんどん不安になる。

「変?」

「逆」

「え?」

 柊真が少しだけ顔をそらした。

「かわいい」

「……!」

 陽菜乃の心臓が、どくんと鳴った。

「今日、いつもより」

「……」

「その……似合ってる」

 柊真のほうまで少し照れているように見えた。

 陽菜乃はマフラーへ口元を隠した。

「……ありがとう」

 胸がいっぱいになる。

 湊に浴衣を褒めてもらった時も。

 すごく嬉しかった。

 でも。

 今日。

 柊真に言われた、

『かわいい』

 は。

 また違う形で、胸の奥に残った。


 二人は、まず駅前のクリスマスマーケットを回ることにした。

 小さな屋台には、クリスマスらしい雑貨や温かい飲み物が並んでいた。

「あ、見て!」

 陽菜乃が足を止める。

「雪だるま」

 木で作られた、小さな雪だるまの飾り。

「かわいい」

「陽菜乃、そういうの好きだな」

「うん」

「文化祭でもうさぎのぬいぐるみ欲しがってたし」

「あれ、今もちゃんと飾ってるよ」

「まだ?」

「まだって何?」

「とっくに飽きてるかと思った」

「飽きないよ」

 陽菜乃は少し笑う。

「柊真くんが取ってくれたものだし」

「……」

「どうしたの?」

「何でもねえ」

 また。

 柊真が顔をそらす。

 でも最近。

 陽菜乃にも少し分かるようになってきた。

 柊真がこうする時。

 たぶん。

 少し照れている。

(……かわいいかも)

 そこまで考えて。

 陽菜乃は自分でびっくりした。

(私、今、柊真くんのことかわいいって思った?)

 慌てて別の屋台へ目を向ける。

「ほ、ホットチョコレート!」

「急だな」

「飲みたい」

「いいよ」

 二人で一つずつ買った。

 白い湯気。

 甘い香り。

 陽菜乃は紙カップを両手で包む。

「あったかい……」

「飲む前に冷ませよ」

「分かってるよ」

「前に熱いの飲んで騒いでた」

「もう覚えてなくていいのに」

 陽菜乃は何度も息を吹きかけた。

 ふー。

 ふー。

 その姿を柊真が見ている。

「……何?」

「必死だなと思って」

「猫舌なんだから仕方ないの」

「知ってる」

 その一言。

 知ってる。

 陽菜乃は、なぜか嬉しかった。

 自分の小さなことを。

 柊真が少しずつ知ってくれている。

 そして自分も。

 柊真の好きな食べ物。

 苦手な教科。

 弟がいること。

 意外と甘いものが嫌いではないこと。

 見た目よりずっと家族思いなこと。

 いろいろ知るようになった。

(もっと……知りたいかも)

 そんな気持ちが浮かんだ。


「そうだ」

 陽菜乃がバッグを開く。

「柊真くん」

「ん?」

「これ」

 小さな紙袋を差し出す。

「……何?」

「クリスマスプレゼント」

 柊真が目を丸くした。

「俺に?」

「うん」

「用意してたの?」

「……うん」

 恥ずかしくなって、陽菜乃は視線を下げた。

 数日前。

 雑貨屋で何度も迷いながら選んだ。

 黒を基調にしたキーホルダー。

 柊真が持っていても変ではないもの。

 あまりかわいすぎず。

 でも陽菜乃らしい色も少しだけ入っているもの。

「開けていい?」

「うん」

 柊真が袋を開く。

 キーホルダーを見る。

「……これ」

「どう?」

「好き」

「ほんと?」

「ああ」

 陽菜乃の顔がぱっと明るくなる。

「よかったぁ」

「陽菜乃が選んだ?」

「もちろん」

「俺が好きそうなやつ?」

「いっぱい考えたよ」

 その瞬間。

 柊真が少しだけ固まった。

「……いっぱい?」

「うん。三軒くらい見た」

「……」

「柊真くん?」

「ちょっと待って」

「え?」

「今めちゃくちゃ嬉しい」

 陽菜乃の胸が、また大きく鳴る。

「そんなに?」

「陽菜乃が俺のこと考えて選んだんだろ」

「……うん」

「じゃあ嬉しいに決まってる」

 その言葉が。

 まっすぐ胸へ入ってきた。

 柊真はその場で、鞄についていた古いキーホルダーを外した。

 そして。

 陽菜乃からもらったものをつける。

「もう使うの?」

「もらったんだから」

「……嬉しい」

 陽菜乃は思わず口にした。

「私も嬉しい」

 二人で笑う。

 クリスマスの光の中。

 その時間が。

 すごく大切に思えた。


「じゃあ俺からも」

「え?」

 柊真がコートのポケットから、小さな白い箱を取り出した。

「私にも?」

「当たり前」

「……開けていい?」

「ああ」

 陽菜乃はそっと箱を開ける。

「わあ……」

 中に入っていたのは。

 白い手袋。

 手首のところに、小さないちごの刺しゅう。

「かわいい……!」

 陽菜乃は目を輝かせた。

「この前、手冷たいって言ってただろ」

「覚えてたの?」

「毎回言ってる」

「でも……」

 自分が何気なく言ったことを。

 覚えていてくれた。

「つけてみろよ」

「うん」

 陽菜乃は手袋をつける。

 指先までぴったり。

「どう?」

「あったかい」

「サイズ大丈夫?」

「ぴったり!」

 陽菜乃は嬉しくなって、両手を柊真へ見せた。

「ありがとう!」

「……うん」

 柊真も少し笑った。

 その笑顔を見た時。

 陽菜乃の胸の中で。

 何かが。

 また一つ変わった気がした。


 午後六時。

 イルミネーションが一斉に灯った。

「……わあ」

 陽菜乃は思わず声を上げた。

 大きなクリスマスツリー。

 青と白の光。

 金色に輝くアーチ。

 夜の広場全体が、まるで別の世界みたいだった。

「すごい……」

「そんな感動する?」

「だって本当にきれい」

 陽菜乃は夢中で見上げる。

 光が瞳に映る。

 その横顔を。

 柊真はしばらく見ていた。

「柊真くん?」

「ん?」

「見ないの?」

「見てる」

「ツリーじゃなくて?」

「……今見る」

「変なの」

 陽菜乃は笑った。

 人がどんどん増えてくる。

 前から。

 後ろから。

 少しずつ押される。

「わっ」

 陽菜乃がバランスを崩した。

「危ね」

 柊真が腕を支える。

「大丈夫?」

「うん」

 でも。

 人の流れはまだ続いている。

 離れそうになり。

 陽菜乃は反射的に、柊真のコートの袖をつかんだ。

「……あ」

 気づく。

 この癖。

 昔から。

 ずっと湊にしていた。

 人混み。

 お祭り。

 初詣。

 怖い時。

 はぐれそうになると。

『湊』

 そう言って、湊の袖をつかんでいた。

 それなのに。

 今。

 手を伸ばした相手は。

 柊真だった。

「ごめん」

 離そうとした、その時。

 柊真が言った。

「別にいい」

「でも」

「つーか」

 柊真が手を差し出す。

「袖よりこっちのほうがよくね?」

「……え?」

「はぐれねえし」

 大きな手。

 陽菜乃は見つめた。

 心臓がうるさい。

「嫌ならいいけど」

 柊真が少しだけ引こうとする。

「待って」

 陽菜乃は。

 自分から。

 その手を握った。

 白い手袋越しでも。

 柊真の手が大きいのが分かる。

「……嫌じゃない」

「……そっか」

 柊真も握り返す。

 二人で歩き始める。

 人混みだから。

 はぐれないため。

 理由はある。

 でも。

(……離したくない)

 陽菜乃は、そう思ってしまった。

 それが。

 少し怖くて。

 同時に。

 すごく嬉しかった。

     ◇

 同じ頃。

「成瀬、写真入れ!」

「今行く」

 少し離れた場所には。

 湊たちサッカー部も来ていた。

 男子部員。

 女子マネージャー。

 何人もの仲間。

 美羽も一緒。

「湊くん、こっち!」

 美羽が笑顔で手を振る。

 でも。

 湊の視線は。

 別の場所で止まっていた。

「……」

 人混みの向こう。

 白いコート。

 すぐ分かった。

「陽菜乃」

 そして。

 その隣に。

 柊真。

 湊の目が。

 二人の手へ向かう。

「……」

 つないでいる。

 陽菜乃から。

 柊真の手を。

 握っている。

 胸が。

 強く痛んだ。

「湊?」

 悠人が気づく。

「……あれ」

 悠人も見る。

「陽菜乃ちゃんと水野か」

 湊は答えない。

 クリスマス。

 誘いたかった。

 本当は。

 自分が。

 陽菜乃の隣にいたかった。

 でも。

 迷って。

 何も言えないまま。

 陽菜乃は。

 別の男と手をつないでいる。

「……遅かった」

 湊の声は。

 誰にも届かないほど小さかった。


 その時。

 陽菜乃が顔を上げた。

「……あ」

 湊と目が合う。

 胸が少しだけ痛む。

「湊」

「陽菜乃」

 二人が近づく。

「湊も来てたんだ」

「……うん」

「サッカー部のみんなと?」

「ああ」

 そして。

 陽菜乃は。

 美羽を見る。

 やっぱり。

 湊の近くにいる。

 胸が。

 ちくり。

 でも。

 以前ほど苦しくない。

 陽菜乃自身。

 それに気づいた。

(……あれ)

 どうして。

 前なら。

 美羽が隣にいるだけで。

 帰りたくなるくらい苦しかった。

 でも今は。

 隣には柊真がいる。

 それだけで。

 大丈夫だと思える。

「陽菜乃」

 湊の視線が下へ向く。

 二人の手。

 陽菜乃は気づいた。

 でも。

 離さなかった。

「……水野と来たんだ」

「うん」

「二人で?」

 少し恥ずかしい。

 でも。

「うん」

 きちんと答えた。

 湊の顔が。

 少しだけ傷ついたように見えた。

 その理由は。

 陽菜乃には分からなかった。

「楽しんでる?」

「うん」

 陽菜乃は笑う。

「すごく」

 その言葉。

 湊の胸に刺さる。

 今まで。

 自分の隣でよく見ていた笑顔。

 今日は。

 柊真との時間の中で生まれている。

「そっか」

「湊も楽しんでね」

「……うん」

 それ以上。

 話すことが見つからなかった。

「陽菜乃、行く?」

 柊真が声をかける。

「うん」

「じゃあね、湊」

「ああ」

 二人が歩き出す。

 湊は。

 その後ろ姿を見送るしかなかった。


「湊くん」

 美羽が戻ってきた。

「どうしたの?」

「何が」

「顔、暗いよ」

「……別に」

「小宮山さん?」

 湊が美羽を見る。

「なんで?」

「だって」

 美羽は少し笑う。

「水野くんと付き合ってるみたいだったね」

「……付き合ってない」

「でも手つないでたよ?」

「知ってる」

 声が思ったより低くなった。

 美羽はそれ以上言わなかった。

 でも。

 湊の視線が。

 陽菜乃だけを追っている。

 そのことを。

 美羽ははっきり見てしまった。


 午後八時前。

 陽菜乃と柊真は、駅近くの小さな公園のベンチに座っていた。

 人混みを離れ。

 少しだけ静かになった。

「今日、楽しかった」

 陽菜乃が言う。

「まだ終わってないけど」

「でも言いたかったの」

「そっか」

「誘ってくれてありがとう」

「うん」

 柊真が陽菜乃を見る。

「……成瀬見て、大丈夫だった?」

 少しだけ胸が揺れる。

「うん」

「ほんと?」

「うん」

 陽菜乃は考えてから。

 正直に答えた。

「美羽ちゃんが一緒にいるの見たら、少しだけ嫌だった」

「……」

「でも」

 柊真を見る。

「前ほどじゃなかった」

「……そっか」

「どうしてかな」

 聞きながら。

 答えは。

 もう少しずつ分かっていた。

「柊真くんが一緒にいるからかな」

「……陽菜乃」

「なに?」

 柊真が。

 何かを言いかける。

 でも。

 やめた。

「今日はいい」

「何が?」

「言うの」

「何を?」

「秘密」

「また?」

「うん」

 陽菜乃は頬をふくらませた。

「最近秘密多いよ」

「そのうち言う」

「いつ?」

「ちゃんと陽菜乃が聞ける時」

「……?」

 意味は分からない。

 でも。

 柊真がとても優しい顔をしていた。


 夜。

 家へ帰った陽菜乃は、自分のベッドへ腰を下ろした。

 スマホを開く。

 今日撮った写真。

 クリスマスツリー。

 ホットチョコレート。

 二人で撮った写真。

 そして。

 柊真がプレゼントしてくれた白い手袋。

「……」

 写真を見るだけで。

 また胸が温かくなる。

 楽しかった。

 本当に。

 そして。

 来年も。

 また一緒に行きたい。

 そう思った。

「……私」

 陽菜乃は胸へ手を当てた。

 湊が好き。

 ずっと。

 そう思っていた。

 でも。

 今。

 一番思い出しているのは。

 湊ではない。

 柊真の笑顔。

 柊真の言葉。

 柊真とつないだ手。

「柊真くん……」

 名前を口にする。

 胸が。

 どきっと鳴った。

 その気持ちを。

 もう。

 ただの友達へのものだとは。

 思えなくなっていた。


 同じ頃。

 美羽も自分の部屋でスマホを開いていた。

 今日撮った写真。

 サッカー部のみんなとの集合写真。

 そして。

 イルミネーションの前で撮った一枚。

 写真の端には。

 湊の肩が少しだけ写っていた。

 美羽は文章を入力する。

『今年のクリスマス、幸せでした♡』

 少し迷って。

 投稿する。

 すぐにコメントがついた。

『もしかして成瀬くん?』

『デート?』

『やっぱり付き合ってるの?』

 美羽は。

 そのどれにも。

 答えなかった。

 否定もしなかった。

 ただ。

 画面を見つめていた。

 そして――。

 この投稿が。

 翌日。

 湊自身の目に入ることになる。

 今まで積み重なってきたすれ違いが。

 初めて。

 大きく崩れ始めようとしていた。