死病の花嫁は薬商伯爵に溺愛される~大正政略結婚、不遇令嬢の幸福論~

 父とふたりでお寺に依頼し、質素に千太のお葬式をした。涙が止まらなかった。
 半年前まで元気だった弟が、どうしてこんなことに——。

 弟の葬儀後、すでに発症していた母の症状が一気に表面化し、布団から起き上がれなくなってしまった。
 千太の死が、母の生きる気力を奪ったのだと思う。

 十一月。母の病状が進行し、痩せ衰え、血痰や喀血の症状がひどくなる。

「琴乃……あなたは生きて」
「お母様、何を言ってるの。静養していたら、きっと良くなるわ。がんばりましょう」

 母は私に移してはいけないと思い、看病だけでなく近寄ることさえ頑なに拒否した。

 そして——弟のあとを追うように、ひっそりとこの世を去った。

「お父様……お母様まで逝ってしまわれたわ」
「琴乃、気をしっかり持つんだ」

 涙が止まらず、泣きはらした目でじっと父を見つめた。
 気をしっかり持てと言われても、足から力が抜けて、その場に崩れ落ちてしまいそうだった。

 二カ月前に千太のお葬式をしたばかり。それなのに、母まで亡くなるなんて……。
 それに、この病は世間から白い目で見られるため、罹患したと言うわけにはいかない。
 母や弟は男爵家の人間だったにもかかわらず、人知れず葬儀を執り行うことしかできなくて、私はそれがもどかしくてたまらなかった。
 病にかかる人が悪いわけではないのに……。