◇◇◇
そんなある日、弟が熱を出して数日寝込んでしまった。
千太は現在十七歳。五年制の旧制中学をこの春に卒業したばかりで、四月からは高等学校に進学が決まっている。
「しばらく寝ていたら治るでしょう。入学式も控えてるし、早く良くならないとね」
母の絹子はそう言って、父が処方した漢方薬を弟に飲ませ、かいがいしく看病していた。
しかし、しばらくして回復したと安堵した途端に、また調子が悪くなり……弟は寝たり起きたりを繰り返すようになる。
結局、四月の入学式には参列できなかった。それどころか、まだ一日も高等学校には通えていない。
「千太を離れに移しなさい。必要以上の接触は禁止だ」
弟は咳が出始めて痩せていき、体調は悪化の一途をたどった。
そんな中、胸の聴診や打診から肺の病かもしれないと察した父が、弟を離れに隔離するよう指示を出したのだ。
‟労咳(結核)”は死の病と呼ばれていて、人に感染するため、非常に忌み嫌われている。
治療薬は存在せず、空気の良いところで安静にしているよりほかにない。
五月。血痰を出した弟の容態が急速に悪化した。
「まさか、千太を見捨てる気ですか? それではあまりにもあの子がかわいそうです!」
そんなある日、弟が熱を出して数日寝込んでしまった。
千太は現在十七歳。五年制の旧制中学をこの春に卒業したばかりで、四月からは高等学校に進学が決まっている。
「しばらく寝ていたら治るでしょう。入学式も控えてるし、早く良くならないとね」
母の絹子はそう言って、父が処方した漢方薬を弟に飲ませ、かいがいしく看病していた。
しかし、しばらくして回復したと安堵した途端に、また調子が悪くなり……弟は寝たり起きたりを繰り返すようになる。
結局、四月の入学式には参列できなかった。それどころか、まだ一日も高等学校には通えていない。
「千太を離れに移しなさい。必要以上の接触は禁止だ」
弟は咳が出始めて痩せていき、体調は悪化の一途をたどった。
そんな中、胸の聴診や打診から肺の病かもしれないと察した父が、弟を離れに隔離するよう指示を出したのだ。
‟労咳(結核)”は死の病と呼ばれていて、人に感染するため、非常に忌み嫌われている。
治療薬は存在せず、空気の良いところで安静にしているよりほかにない。
五月。血痰を出した弟の容態が急速に悪化した。
「まさか、千太を見捨てる気ですか? それではあまりにもあの子がかわいそうです!」



