彼は着物が汚れないよう、手で椅子を払ってから私を座らせてくれた。
「ありがとうございます」
彼の自然な気遣いに、トクンと胸が高鳴る。
私の言葉に微笑んだ彼が隣に座り、歩いていたときよりも距離がぐっと近くなった。
男らしい体格をすぐそばで感じて、私は一息つくどころか、逆に緊張してきてしまう。
身を引いて距離を取りたい気持ちと、もう少しこのままでいたい気持ちが、心の中でせめぎ合う。
結局どちらも選べず、私は膝の上で静かに自身の両手を重ねた。
「疲れてないか?」
目の前の池で悠々と泳ぐ錦鯉を見つめながら、篤志さんが不意に問いかけてきた。
「大丈夫です」
「そうか。もうすぐここへ迎えが来る。帰りは車だから」
篤志さんは懐中時計で時間を確認している。事前に迎えの手配を済ませていたのだろう。
並んで座る気恥ずかしさがありながらも、私は満ち足りた心地で美しい景色を堪能していた。
「旦那様、今日はありがとうございました。とても楽しいひとときでした」
軽く頭を下げて感謝の気持ちを伝ると、篤志さんはふわりとやわらかい笑みをたたえた。
「息抜きできたかな。……母も姉も妹も、君に嫌な態度を取って、本当にすまない。つらい思いをさせているのはわかってるんだ」
「いえ、そんな……」
「あんなに頑なだとは思わなかった」
「ありがとうございます」
彼の自然な気遣いに、トクンと胸が高鳴る。
私の言葉に微笑んだ彼が隣に座り、歩いていたときよりも距離がぐっと近くなった。
男らしい体格をすぐそばで感じて、私は一息つくどころか、逆に緊張してきてしまう。
身を引いて距離を取りたい気持ちと、もう少しこのままでいたい気持ちが、心の中でせめぎ合う。
結局どちらも選べず、私は膝の上で静かに自身の両手を重ねた。
「疲れてないか?」
目の前の池で悠々と泳ぐ錦鯉を見つめながら、篤志さんが不意に問いかけてきた。
「大丈夫です」
「そうか。もうすぐここへ迎えが来る。帰りは車だから」
篤志さんは懐中時計で時間を確認している。事前に迎えの手配を済ませていたのだろう。
並んで座る気恥ずかしさがありながらも、私は満ち足りた心地で美しい景色を堪能していた。
「旦那様、今日はありがとうございました。とても楽しいひとときでした」
軽く頭を下げて感謝の気持ちを伝ると、篤志さんはふわりとやわらかい笑みをたたえた。
「息抜きできたかな。……母も姉も妹も、君に嫌な態度を取って、本当にすまない。つらい思いをさせているのはわかってるんだ」
「いえ、そんな……」
「あんなに頑なだとは思わなかった」



