死病の花嫁は薬商伯爵に溺愛される~大正政略結婚、不遇令嬢の幸福論~

 篤志さんは短くうなずくと、手元にあった革表紙のメニュー表を私のほうへ向けた。
 そこには美しい挿絵と共に、見慣れないカタカナの文字がずらりと並んでいる。

「せっかくだから、何か甘いものでも食べるといい。ここの‟パフェ”という洋菓子は、果物やアイスクリンが綺麗に盛りつけられていて、若い女性に人気があるらしいんだ」
 
 どこか不器用そうに流行りのデザートを勧めてくれる彼の様子が微笑ましくて、返事の代わりに笑みをたたえた。

「パフェ……食べたことがないんですけど、きっとおいしいのでしょうね。では、せっかくですからそれにします。……旦那様は?」
「俺は珈琲だけでかまわない。琴乃は遠慮せず頼むといい」

 私をよろこばせようと、事前にこの店の評判を調べておいてくれたのだと思う。その気遣いがうれしくて、どうしようもなく胸がきゅんとした。

 しばらくして店員が運んできたパフェは、きらびやかで愛らしいガラスの器に盛りつけられていた。
 薄黄色のバニラのアイスクリンの横には、色鮮やかなシロップ漬けのみかんと、真っ赤なさくらんぼがちょこんと添えられている。器の底には淡い琥珀色のゼリーも敷かれていて、全体的にとても美しく、まるで芸術品のようだった。

「まぁ……なんて綺麗なのでしょう」