死病の花嫁は薬商伯爵に溺愛される~大正政略結婚、不遇令嬢の幸福論~

「少しずつ理解してもらうしかないと思っていますから。心配しないでください」

 お義母様からは事前に、食事は共にしない、必要以上に顔を合わせたくないと言われている。
 女中に私たちの部屋まで食事を運んでもらうのは忍びないけれど、最初は致し方ないだろう。
 人の意識を急に変えるのは難しいと、私もわかっている。気長に構えなくては……。

「何かあったら、遠慮なく俺に言ってくれ」
「はい。ありがとうございます」

 先ほどのお義母様たちの態度で、彼はまるで自分のこと以上に傷ついたような顔をして、いたわるように私を見つめていた。

 ◇◇◇

 しかし、越してきた翌日早々、それは起きた。
 部屋で朝食を食べ終え、仕事に向かう篤志さんを送り出したあと、お義母様が部屋までやってきたのだ。
 
「お義母様、おはようございます」
「離れの部屋を空けたから、そっちに移りなさい」

 朝の挨拶をしようと姿勢を正して会釈をしたものの、いきなり告げられた言葉がそれだった。

「……離れ、ですか?」
「そう。荷物は女中たちに運ばせるから。今すぐに」