死病の花嫁は薬商伯爵に溺愛される~大正政略結婚、不遇令嬢の幸福論~

 華やかな義姉妹たちを前にすると、心の中で比べられているような気がして、萎縮しそうになった。
 だけど堂々と振る舞わなければ、それこそ没落した男爵家の娘だと笑われてしまう。
 
 気を張り直していたら、奥から篤志さんの母である君江(きみえ)さんが姿を現したため、私はもう一度深く一礼をした。
 
「母上、戻りました」
「お義母様、本日よりお世話になります。よろしくお願いいたします」

 お義母様は挨拶に答えることなく、顎をわずかに引いて、頭の先から足の先まで私に視線を走らせた。
 上質な紫紺の着物に身を包み、帯留めには大粒の真珠が光っていて、驚くほど気品に満ちている。
 だけど、その表情と仕草で、私は歓迎されていないとすぐにわかった。

「話は中でしよう」

 篤志さんがそう言って、玄関で靴を脱ごうとすると、お義母様が「待って」と強めに制した。

「その葛籠は消毒したの? 琴乃さん自身も」

 お義母様は顔をしかめて私の古びた葛籠を見つめると、手にしていた扇子で小さく口もとを覆う。
 その瞬間、頭が真っ白になった。嫁いだ初日からバイ菌のように扱われるとは、思っていなかったのだ。
 父も母も弟も、こんな目で見られながら死んでいったのかと思うと、ズキリと胸が痛んだ。

「母上!」
「だって怖いじゃないの。移ったらみんな死ぬのよ?」