誕生日カーストの女王(※制限時間10分)

「おっ、いたいた!」(告白現場を見つけた)
校舎の陰から、私はいつものように体育館裏の告白現場をバッチリとキャッチした。 
どうやら告白は成功して抱き合っていた。 
今日のカップルも初々しくて、見てるだけで胸キュン度100パーセント! 
「えぇ……いいなぁ〜」
思わず口から本音が漏れる。
他人の恋バナは大好物だし、応援するのも大好き。
……だけど。そう言えば、私は……?
自分の胸に手を当てて、ふと、あの騒がしい男の子の顔が頭をよぎった。
いつもイベントの時は文句も言わずに裏方で走り回って、普段は「お菓子くれ〜」って子どものようにおねだりしてくる、10月31日生まれのコスプレ男。
(……なんで私、今ロイのこと思い浮かべてるわけ!?)
「違う違う! 私はただ、客観的にカースト上位メンバーを観察してるだけで、別にあいつのことがどうこうって訳じゃ……!」
誰もいない校舎の裏で、ブンブンと激しく頭を振って言い訳をする。
いつもおちゃらけてるロイのクセに、たまに重い荷物をひょいって持ってくれたりするから、調子が狂うのだ。
「あーもう、今日の幸せのおかわりはここまで! 一旦教室戻ろ!」
パタパタと自分の顔を両手で仰いで熱を冷まし、スキップ混じりで教室の扉をガラッと開けた。
そしたら。
「ない! ないんだよ〜〜!! 俺のスマホどこ行っちゃったの〜!?」
案の定というか何というか、ハロウィンの魔女みたいなマントを引きずりながら、半泣きで机の周りを四つん這いになって探しているロイの姿があった。
クラスのみんなはもう帰っちゃったみたいで、教室にはロイが一人きり。
「もー、ロイ! 何やってんのよ、だらしないなぁ!」
私は腰に手を当てて、わざと呆れたような声を出す。
本当は、そんなドタバタした姿すら「ロイらしいな」なんて思って、ちょっと安心しちゃってる自分がいる。
「あ! 素気〜! 聞いてよぉ、スマホが神隠しに遭ったの! 稀ちゃんと連絡先交換したかったのにぃ……!」
床に膝をついたまま、ロイが捨てられた犬みたいな目で私を見上げてくる。 
そのうるうるした瞳に、私の心臓がドクン、と変な音を立てた。 
(……な、なによその顔。反則でしょ……!)
「しょ、しょうがないわね! 恋バナの神様であるこの私が、特別に一緒に探してあげるわよ!」 照れ隠しで大きな声を出しながら、私はロイの机の周りにしゃがみ込んだ。
この時の私はまだ知らなかった。
他人の恋バナばかり覗いていた私が、まさか数分後に、人生最大のウルトラ胸キュンイベントの『当事者』になるなんて。