誕生日カーストの女王(※制限時間10分)

「とにかく席につけ、素気!」  
始業くんが顔を真っ赤にしたまま、大興奮している素気ちゃんを自分の席へと押し戻した。
そして、コホンと一つ咳払いをすると、真面目な顔つきになって私に向き直る。 
「新年さん、照れ隠しで話をそらすわけじゃないが……君がこの学園のトップになった以上、この『平野学園』の絶対的なルールについて説明しておく必要がある」
始業くんの言葉に、さっきまで騒がしかった教室が一気に静まり返った。 
床でうめいていたロイくんも、不機嫌そうな国三(くにさん)も、静かにこちらの話に耳を傾けている。
「さっきも言った通り、この学園は『誕生日カースト』で全てが決まる。そして、元旦生まれの君はカーストの最頂点だ。君には、学園の全生徒に対する【絶対命令権】がある」
「ぜ、絶対命令権……ですか?」
思わず生唾を飲み込む。 
「そうだ。例えば、君が『自分の秘密を答えろ』と言えば、一般クラスはおろか、俺たち最高級クラスのメンバーであっても、その命令には絶対に逆らうことはできない。それがこの学園のシステムだ。君の言葉には、それだけの重みがある」
始業くんの真剣な眼差しに、私は圧倒されて言葉を失ってしまう。
ただの普通の女の子(のつもり)だった私が、そんな恐ろしい権力を持ってしまうなんて……。「うわぁ、すごーい! 稀ちゃんが何か命令したら、みんな従わなきゃいけないんだね!」
素気ちゃんが目をキラキラさせながら身を乗り出してきた。 
「ねぇねぇ稀ちゃん! 最初の命令は何にする!? 『男子メンバーは全員、稀ちゃんに毎日1回壁ドンすること』とか、そういうキュンキュンする命令にしちゃいなよー!」
「ちょ、ちょっと素気ちゃん!? 何を言ってるの……っ!?」
あまりの爆弾発言に、私の顔は一気に沸騰する。 
すると、窓際で静かに話を聞いていた流星くんが、ニヤリと笑って口を開いた。
「あはは、それいいね! 僕はいつでも壁ドンする準備できてるよ? 織姫を待つ彦星みたいにね」「流星まで乗っかるな!」
始業くんが鋭くツッコミを入れる中、国三(くにさん)はフンと鼻を鳴らしてそっぽを向いた。「命令権だか何だか知らねぇが、さっきのパンチは効いたぜ……。新年、お前がトップなのは認めてやる。だから次からは、ちゃんと俺のことを国三(くにさん)って呼べよ」
「……う、うん。ごめんなさい、国三(くにさん)くん」
私が恐る恐る名前を呼ぶと、国三(くにさん)は少しだけ耳を赤くして、フイッと窓の外を眺めた。
「とにかく」と、始業くんが話をまとめるように私を見る。
「その命令権をどう使うかは君次第だ。だけど、もし困ったことがあれば、副会長の俺や、ここにいる最高級クラスの仲間を頼ってくれ。俺たちは君をサポートするためにいるんだからな」
「みなさん……」
最初はどうなることかと思ったけれど、みんなの言葉に少しだけ緊張がほぐれていくのを感じた。
……でも、もしまたあの『10分間の最強人格』が暴走して、とんでもない命令を下してしまったらどうしよう!?
そんな不安を胸に秘めたまま、私の波乱万丈な学園生活が本格的にスタートしたのだった。