誕生日カーストの女王(※制限時間10分)

目覚めるとある女の子がいた。
「副会長、申し訳ありません。我が主(あるじ)である新年稀は、元旦生まれの『トップの波動』が強すぎるあまり、時折こうして周囲を威圧する神々しい人格が降臨してしまうのです。10分経てば、このように大変大人しく、丁寧な本来の姿に戻りますので……」
(なんか…独特)
「トップの……波動……?」
困惑する彼を横目に、私が平謝りするのを見て、副会長の始業くんは小さくため息をつき、乱れた髪をかき上げた。
「……まぁいい。初日だし、新年さんの『トップの波動』とやらに免じて、今回は不問に処す。ただし、次からは気をつけてくれよ。せっかくだから、このクラス……最高級クラスの連中を紹介しておく」
始業くんは、クラスのメンバーを順番に指さしながら、テキパキと説明を始めた。「俺は4月8日の始業式生まれ、始業羽目(しぎょう はめ)。
一応このクラスのリーダーと、生徒副会長をやっている」 
「で、そこで顔を腫らして倒れてるのが、12月25日のクリスマス生まれ、冬国三太(ふゆくに さんた)。本人は名前が気に入らないらしくて『国三(くにさん)』って呼べってうるさいクール系だ」
「その隣でニコニコしてるのが、12月24日のクリスマス・イブ生まれ、冬川レント。見ての通り優しくてふわふわしたやつで、いっつも誰かにプレゼントを配ってる」
「奥で腰をさすってるコスプレ男は、10月31日のハロウィン生まれ、秋化兼ロイ(あきばけ ろい)。イベントの時は縁の下の力持ちとして動くけど、普段はお菓子ばっかり食べてるやつだ」
「窓際にいるキラキラしたやつは、7月7日の七夕生まれ、夏星流星(なつぼし りゅうせい)。星の観察が趣味で、なんか複雑な家庭の事情で離れ離れになった双子がいるらしい」
「それから、さっき君を助けてくれたお淑やかな子は、3月25日の卒業式生まれ、卒業 紗雨(そつぎょう さう)。いつも本を読んでてミステリアスだけど、君の良き理解者になってくれそうだな」「最後に、まだここにはいないけど、2月14日のバレンタイン生まれで、チョコと恋バナが大好きなうさぎ系女子で、よくほかの人の告白を体育館裏で見てる甘恋 素気(あまこい すき)ってやつが――」
全員の紹介が終わり、私が「よ、よろしくお願いします……!」と頭を下げた、その時だった。
始業くんが私の目の前に一歩、歩み寄ってきた。驚いて見上げる私の頭に、彼の大きな、だけど温かい手がぽん、と置かれる。
「新年さん。君が1月1日生まれ、この学園のトップだ。色々大変だと思うけど……頑張って」
少しぶっきらぼうだけど、そこには確かな優しさがこもっていて、優しく髪を撫でていく。
至近距離で見る始業くんのイケメンぶりに、私の心臓が爆発しそうになったその瞬間。 
ガラッ!!!教室の扉が勢いよく開き、一人の女の子が飛び込んできた。
「あっ、幸せだわー! たっだいまー!!」噂をすれば彼女、今しがた紹介されたばかりの甘恋 素気ちゃんだ。
今日も今日とて体育館裏で誰かの告白をバッチリ覗き見してきたらしく、その顔は「これぞ恋バナ!」と言わんばかりの幸福感に満ち溢れている。
しかし、素気ちゃんは教室に入るなり、ピキッと動きを止めた。彼女の視線の先には、ネクタイの崩れたイケメン副会長(始業くん)が、顔を真っ赤にした美少女?転校生(私)の頭を、優しく撫で回している超至近距離の構図。
「…………ッッッ!!!???」素気ちゃんは一瞬で息を呑み、両手を頬に当てて目を限界まで輝かせた。
「な、ななな、何これぇぇぇ!? 入学初日の朝から、こんな特大のウルトラ胸キュンイベントが発生してるなんて聞いてないわよーーーっ!! 幸せのおかわり、ありがとうございますっ!!」
鼻血が出そうなほどの勢いで大興奮する素気ちゃんに、始業くんは慌てて手を引っ込めて「違う、これはだな……!」と顔を赤くしている。
紗雨ちゃんは「あらら…こんな事をするから」と呆れたように副会長さんをみていた。