午前3時の記憶喪失

付き合って1年の記念日の夜いつも通り深夜2時に電話で話しているとき、
私は寂しさに耐えかねて、ついに涙を流してしまった

「レン……ごめんなさい。私、本当は毎朝、あなたのことを忘れちゃうの。朝起きたら、ノートを見るまであなたの名前すら思い出せない。こんな私が、あなたの恋人でごめんね……」

電話の向こうで、レンは息を呑んだ。
そして、今までに聞いたこともないような、切なくて、今にも泣き出しそうな声でこう言ったんだ

「……知ってるよ。全部、知ってる」

「え……?」

レンは静かに、驚くべき真実を話し始めた。

「君が事故に遭ったあの日、助手席で運転していたのは俺だ。君の記憶を奪ったのは、俺の不注意なんだ。……そして、君の部屋にあるそのノートを書いたのも、毎日君の部屋に忍び込んで机に置いているのも、全部俺だよ」

頭が真っ白になった。じゃあ、レンは毎日、私に忘れられていると知りながら、
付き合いたてのフリをして電話をかけていたの?

「君の家族はみんな、俺を責めて君から引き離した。だけど、俺は君を諦められなかった。……毎朝、俺のことを完全に忘れて目覚める君に、もう一度恋をしてもらうために、俺は毎日、君の部屋にノートを置きに行ったんだ」

レンの声が震えている。

「昼間に会いに行ったら、君は俺を見て不審者だと思うだろう? だから、ノートを読んで『恋人がいる』と認識した夜の時間にしか、君に近づけなかったんだ。毎日、君に一から俺のことを教え込んで、毎晩、世界で一番幸せな恋人同士に戻る。それが、俺の犯した罪への我が儘なんだよ」