隠しきれない美少女~地味子を独占したいイケメンたち!?~

朝、テレビから聞こえた単語に聞き覚えがあった。

「神代朝陽…まさか、ね…」

神代朝陽は私のクラスメイト、陸上で世界ランク二位の神代朝陽とは違う人物だと思う。

学校で聞いてみよう。
今日は久しぶりの部活があるけど、同じクラスだから聞けるかな?

あっ、朝陽くん……

「朝陽くん、ちょっとい―」

「朝陽、昨日の見たか?」

「みたみた、めちゃおもろかった」

私の考えは甘かったみたい。

朝陽くんは友達がたくさんいるから、一人になることがめったにない。

朝陽くんに話しかけるなら、一人にならないと話しかけにくい。

一日中気にしていたけれど聞くことはできなかった。

「まぁ、いいっか」

明日にでも聞こう。

そう思って更衣室に向かう。

「あれ? ジャージがない…」

周りを探しても見つからなくて、仕方なくそのまま行くことにした。

バドミントンとは違って、テニスは外で行う。

少し肌寒いけど、これくらいなら我慢できるかな。

「つかれたー」

外に出ると、サッカーをしていた人たちが水道に向かっていくところだった。

テニス部より、開始が早いんだ!

「あっ、高嶺先輩」

そのなかには高嶺先輩もいて、だれとも話していないけれど、少し笑顔になっていた。

すると、私に気づいたのかこっちにやってくる。

えっ、前起こしちゃったことのお説教かな!?

一人で焦っていると、話しかけてきた。

「お前、ジャージは?」

思いもよらない発言に戸惑いながらも答える。

「えっ、えっとなくしちゃって……」

どうしてこんなこと聞いてくるんだろう……?

「これ使うか?」

ベンチに置いてあった自分のジャージを持ってきて、私に差し出す。

「えっ」

「震えてるしこれ着たら」

あっ、無意識に震えていたんだ。

絶対に引き下がらないという顔をしているので、ありがたく借りることにした。

「ありがとうございますっ!」

私が受け取ると、無言で戻っていった。

「いいのかな……?」

「テニス部始めるぞー」

コーチの声が聞こえて、私も急いで戻る。

たぶん、前、怒らせちゃったから、そのお詫びにこれを洗えってことだと思う。

こんなことだけでいいなら、遠回しに言わなくてもいいのに…

せっかく借りて着ないのはもったいないから、ジャージを着た。

「大きい…」

思っていたよりも大きくてびっくりする。

「結衣、なんかジャージ大きくない?」

横から、お兄ちゃんに話しかけられた。

お兄ちゃんも同じテニス部なんだ。

「ジャージなくしちゃって、高嶺先輩が貸してくれたの」

そういうとお兄ちゃんは不思議そうに首を傾げた。

「結衣がなくしものなんて、めずらしいね」

「そうかな? 結構なくしもの多い方だと思うけど」

それなら、お兄ちゃんのほうがなくしものが圧倒的に少ない。

というか、なくしものしたことないと思うけど…

「あいつが、女子にものを貸すなんてめずらしいな…」

すごーく小さな声でつぶやいたお兄ちゃん。

「テニス、頑張ってね」

私が微笑むと、お兄ちゃんも笑顔で笑ってコートに向かった。

うっ、お兄ちゃんの笑顔がまぶしい…

お兄ちゃんが美形で誇らしいけど、私が顔負けしている…

そんなことを思いながら、準備運動をして、テニスを始める。

最近、新しいテニスボールが飛び出してくる機会が使えるようになったから、練習がスムーズ。

いままで、私の相手をしてくれる人がいなくて、練習があまりできなかったから。

「私、そんなに下手かな…?」

機械から出てくるボールは、速くて威力も強かった。

なんとか打ち返すけど、打ち返すので精一杯。

「「「キャー」」」

急に叫び声が聞こえて、とっさに振り向く。

女の子たちの目線の先には、

「高嶺先輩……」

すごい速度で走って、ボールを何回もシュートしている。

「す、すごい…」

後ろから追いかけてくる敵チームの人たちも、追いついていなくて高嶺先輩が独走している。

「かっこいい……」

自分から出た言葉にびっくりしながら、口をふさぐ。

男の子をかっこいいと思ったのは、お兄ちゃん以外で初めて。なんだか知らない感覚にドキッとする。

「練習に集中しなきゃ」

部活は人数が多くて、練習できる時間が短い。

短い時間でもしっかり練習して、大会に生かさないと!


「ありがとうございました!」

最後にあいさつをして、水を飲む。

そういえば、ジャージどこ行ったんだろう…? ちゃんと、しまっておいたはずなんだけど…

階段を上がって更衣室に向かう途中、ふと教室の前を通ると私の机に何か置かれていた。

「失礼します…」

すごーく小さな声で教室に入って、確認する。

「あっ、ジャージ!」

おいてあったのは、なくしたはずのジャージで隣にはメモが置いてあった。

『ゴミ箱においてあった 玲』

ゴミ箱……? 私は置いた記憶がないけど……

そこまで考えた時、少し納得した。

「篠原さんたちが捨てたんだ…」

着替えているときもちらちらとこっちを見て、話していた人たち。

「前、ほめてくれたから友達になれると思ったのになぁ」

残念……

小学校の時とは違って、仲良くできる子がいると思ったのに。
私ってなんで女の子たちと仲良くできないんだろう?

仕方ないと思いながら、気持ち切り替えて更衣室に再び歩き出した。