朝ぱっちりと目が覚めた私は制服に着替えて、朝ご飯を食べた。
すると、テレビから昨日の大会のことが流れていた。
「如月ゆりさん、圧倒的な優勝でしたね」
「はい、これで世界ジュニア大会一位ですね」
如月ゆりは私のテニスをしているときの名前。本名の如月はそのままに、結衣をゆりに変えた。
「それにしても、取材を一回も受けたことがないらしく、情報が全くないんだそうです」
「なぞが多いところが、ファン急増の秘訣なのでしょうか…?」
ファン? ファンって、人気な人にできるものだよね。
でも、やっぱりこれで仮面を外したら、美少女じゃない詐欺って思われちゃう!
「結衣~、出発しなくていいの?」
お母さんにそういわれて、時計を見るとあと五分でいつもの出発の時間。
テレビをゆっくり見ていたから時間が無くなっちゃってたみたい。
「行ってきます!」
急いで家を飛び出して電車に乗り込む。
なんとか、いつもの時間の電車に乗り込めた。
学校につくとテニスのことが話題になっていた。
「ねぇ、すごくない! 無敗で世界一位だって! 美少女だし最強だしあこがれる~」
「わかる、すごいよね、ゆりちゃん。一回あってみたい!」
この学校はスポーツに力を入れていて、難関校の一つらしい。だからか、如月ゆりに興味を持つ人が
多いのかな?
でも、目立つのは嫌だから、サッサっと準備をして席に着く。
そして、趣味二つ目の読書を始める。
最近はミステリー系にはまっていて、だんだん解けていくのがおもしろい。
私は、別に友達がいるわけでもないから一人で行動して読書する。これが日課だった。
「如月、ちょっといいか」
先生に呼び出されて、職員室まで行く。
「最近できたことなんだが、あまり学校に来ていない人に特別授業を実施することになった。如月も
受けてみないか?」
私は、テニスの練習や大会で学校をお休みすることが多い。先生に理由は言っていないけれど、先生は察していつも聞かないでくれる。
特別授業か…、わからないところもあったしちょうどいいかも。
「はい、お願いします」
日程の紙を渡されて職員室を出る。
「初めの日はいつだろう…?」
紙を見ると今日の放課後から、一週間に三回だった。
放課後といえば、唯一学校での楽しみの部活があるのに…
「まぁ、しかたないかな」
少しどんよりした気持ちで、特別授業の教室へ向かう。
「失礼します…」
ガラガラと扉を開けるとそこには、息をのむようなきれいな人がいた。
私があけた扉の音で起きてしまったのか、むくっと顔を上げた。
「ご、ごめんなさい! 起こしてしまうつもりはなくて…」
私がとっさに謝ると、一瞬顔をしかめてまた寝てしまった。
ど、どうしよう…怒らせてしまったかな…
ひとまず、自分の席に着こう。
席の番号を確認する。
えっ…! さっきの人と隣の席!
ちょっと気まずいなぁ…でも、違うとこ座ったら先生困っちゃうよね…
なるべく音を出さないように座って息をつく。
よかった、起きてない。
読書を始めようとすると、バンっと勢いよく扉が開いて、クラスメイトの神代朝陽くんが入ってき
た。
「失礼しまーす」
急に入ってきたから、びっくりして後ろに倒れそうになってしまった。
「寝てるから…、しずかにね…」
なるべく小さな声で話す。
その時また扉が開いて、今度は先生が入ってきた。
メガネをかけた女性の先生が教えてくれるらしい。
隣の人は寝たままで授業中起きることはなかった。
「つかれた~」
授業が終わると、朝陽くんが大きく伸びをして、机に突っ伏した。
私はこのまま帰っていいのかわからなくて、先生が教室を出るのを待った。
それにしても、この人ずっと寝てたけど大丈夫なのかな…?
先生が教室を出るのと入れ替えに、お兄ちゃんと、お兄ちゃんの友達らしき人が入ってきた。
「結衣、おつかれさま」
「お兄ちゃん! なんでここにいるのが分かったの?」
「先生に聞いてここにいるって言ってたから、お迎えに来たんだ」
そっか、いっしょに帰ろうと思ったんだ。なら、納得だね。
「えっ、お前と竜斗先輩って兄妹だったのか!」
驚いたように目を見開いてこっちを見る朝陽くん。
「う、うん。そうだよ…言ってなかったっけ?」
同じ苗字だし、隠しているつもりは、なかったんだけどな…
「お兄ちゃん、その人って…」
「あっ、そうそう。この人は、朱雀柊っていって、頭がいい人なんだよ。俺の友達」
紹介してくれたのは、頭がいい人らしくて、見た目もそんな感じだった。
「それで、さっきの先生は今日臨時でお願い人だったんだけど、本当は柊が教えてくれるんだよ」
「そ、そうだったんだ…」
一つ上の先輩に教えてもらうなんて…。なんか、不思議な感じ
「次から、よろしくお願いします」
頭を下げてあいさつすると、ふっ、と笑った声が聞こえた。
「そんなにかしこまらなくっていいよ。俺のことは柊って呼んでくれればいいから」
意外と優しそうな先輩でよかった…
意外と、は失礼かも。
「はい、わかりました。でも、さすがに呼び捨ては慣れないので、柊先輩で…」
「ふっ、わかった」
すると、隣の席で寝ていた人が、初めて声を出した。
「柊…」
なんだか、少し寝ぼけているようでほわほわしている。
「これは、高嶺玲。冷たい奴だが、優しくしてやってくれ」
柊先輩の説明で、名前が分かった。
たぶん、柊先輩と高嶺先輩はお友達なのだと思う。
「柊さんに教えてもらえるなんてやったぜ!」
喜んでいる朝陽くんに、ほほえましくなった。

