真面目だけが取り柄の聖女候補ですが、今日から頑張るのをやめます!【完】

少し驚いて、でもすぐに優しい瞳で私を見てくれるエリオット。

「どうされましたか?」

聞かれたのに、私は答えられなかった。
なぜなら、自分の気持ちの変化に動揺していたから。

(あ……これって……)

私は、恋を知らない。
今まで「そういう役目だから」と割り切って、皇太子妃になる未来を受け入れようとしていた。
一緒にいるのが役割として選ばれたなら、皇太子妃の務めも果たそうと思っていた。

でも、それって恋でも愛でもないよね。
人を好きになるって、自分の選択で、この人と一緒にいたいと思うことなんだ…。

(私……エリオット様が好きなんだ……)

始めて自覚した恋心に驚くと同時に絶望した。
だって、私は聖女候補と同時に皇太子妃候補なのだ。
聖女に選ばれれば、私は皇太子ラフィール様の妻になる。
ラフィール様以外の男性に恋心を抱くなんて許されない。

「ごめんなさい…なんでもないの。
そうだな…できたら果物をお願いできますか?」

私は掴んでいた手を放し、エリオットから目を逸らした。
この気持ちは、誰にも悟られてはいけない。

エリオットは私を気遣いながら部屋を出て行った。
エリオットが部屋の扉を閉めたとき、私は自分の気持ちに鍵をかけた。