文化祭当日。
色とりどりのTシャツを着た生徒たちが廊下を行き交う。
クラスメイトたちは、お揃いのクラTを着て、それぞれの催し物に熱を入れている。
私と朝比奈君も、もちろんお揃いのTシャツだ。
ショールを渡したあの日から、クラスの人たちは「遠野さん、おはよう」と声をかけてくれるようになった。
教室で存在を消していた私は、今では保護色のように静かに混ざって目立たなくなることも、机や椅子のように擬態することも、もうできなくなっていた。
二日間にわたった文化祭は無事に幕を閉じ、後片付けまで終えると、ようやく日常が戻ってきた。
美化委員も、ゴミの分別や置き場所の指示に追われて忙しかった日々が落ち着き、少しずつ普段のリズムを取り戻していった。
久しぶりのファミレス。
二人だけで、文化祭の打ち上げ。
「お疲れ様でした」
カチン。
グラスを合わせる。
去年までは、イベントの打ち上げなんて他人事だったな、とふと思う。
二人だけだけど、こうして共有できる時間が嬉しい。
「良かったね、遠野。遠野もちゃんとクラスの一員だったよ」
「ありがとう。少しだけ前に進めたかな」
「もちろん。遠野は影の功労賞だ」
「朝比奈君もね」
「えっ? 俺も? なんで?」
「高いところ担当。高いところの作業で、朝比奈君も色んな人に呼ばれてたよね。ちゃんとクラスの一員だったよ」
二人で、ちゃんとクラスの中で存在していたことを褒め合って笑った。
私たちは、また一歩前に進めた気がする。
外には、冷たい風が吹く日が多くなっていた。
「もうすぐ冬になるね。これからは、ニット系のアイテムが増えてくるな」
「創作は進んでるの?」
「最近は、あまりできてなかったかな。テストもあるしね」
そうは言ったけれど、テストはまだ一か月先だ。
でも、頑張って受験した学校だけあって、授業についていくのがやっとな私は、これくらいの時期からテスト勉強を始めないと、間に合わない。
「あっ、でも、これ見て」
私は、自分のスマホに表示した写真を、朝比奈君に見せた。
「おっ。いいじゃん、これ。俺、これ欲しい」
そこには、百均で買ったプラスチックケースに、毛糸で編んだものを貼り付けたスマホケースが写っている。
アーガイル柄のデザインで、白をベースに、ターコイズブルーのひし形と、紺と赤のラインが入ったものだ。
「朝比奈君のスマホの機種、ちゃんと確認してから買えばよかったな……」
「これ、サイズが合えばあげられるんだけど……」
私のスマホに合わせて買ってしまったから、朝比奈君のものに合うかどうかわからない。
(男性用として作るつもりだったのに…)
ちゃんと朝比奈君のスマホの機種を確認してからにすればよかったと、少し後悔した。
「うーん、確かに俺のはもっと大きいやつだな。」
朝比奈君は制服のポケットに手を入れた。
「ほら、これ」
そう言って、彼は自分のスマホを取り出して見せてくれた。
「今度、朝比奈君の好きな色で作るね。」
「ほんと? やった、嬉しい。」
こうして、素直に嬉しい気持ちを笑顔で見せ合える。
穏やかな時間。
ぼやけていた景色が、少しずつ色を取り戻していく。
「俺、次はこんなのがいいと思うんだけど」
そう言って、朝比奈君は差し出していたスマホを操作する。
検索結果に表示された画像を、私に見せてきた。
「パイロット帽って知ってる?」
私は静かに首を横に振る。
「もともと飛行機乗りの人が被ってた帽子なんだけど、毛糸で作ったらかっこいいんじゃないかと思って。」
想像してみる。
「……いい。とってもいい。例えば、朝比奈君のコートの色に合わせて、チャコールグレーの毛糸に……」
そんなふうに、浮かんできたイメージを、朝比奈君と一緒に、色や毛糸の種類を相談しながら膨らませていった。
色とりどりのTシャツを着た生徒たちが廊下を行き交う。
クラスメイトたちは、お揃いのクラTを着て、それぞれの催し物に熱を入れている。
私と朝比奈君も、もちろんお揃いのTシャツだ。
ショールを渡したあの日から、クラスの人たちは「遠野さん、おはよう」と声をかけてくれるようになった。
教室で存在を消していた私は、今では保護色のように静かに混ざって目立たなくなることも、机や椅子のように擬態することも、もうできなくなっていた。
二日間にわたった文化祭は無事に幕を閉じ、後片付けまで終えると、ようやく日常が戻ってきた。
美化委員も、ゴミの分別や置き場所の指示に追われて忙しかった日々が落ち着き、少しずつ普段のリズムを取り戻していった。
久しぶりのファミレス。
二人だけで、文化祭の打ち上げ。
「お疲れ様でした」
カチン。
グラスを合わせる。
去年までは、イベントの打ち上げなんて他人事だったな、とふと思う。
二人だけだけど、こうして共有できる時間が嬉しい。
「良かったね、遠野。遠野もちゃんとクラスの一員だったよ」
「ありがとう。少しだけ前に進めたかな」
「もちろん。遠野は影の功労賞だ」
「朝比奈君もね」
「えっ? 俺も? なんで?」
「高いところ担当。高いところの作業で、朝比奈君も色んな人に呼ばれてたよね。ちゃんとクラスの一員だったよ」
二人で、ちゃんとクラスの中で存在していたことを褒め合って笑った。
私たちは、また一歩前に進めた気がする。
外には、冷たい風が吹く日が多くなっていた。
「もうすぐ冬になるね。これからは、ニット系のアイテムが増えてくるな」
「創作は進んでるの?」
「最近は、あまりできてなかったかな。テストもあるしね」
そうは言ったけれど、テストはまだ一か月先だ。
でも、頑張って受験した学校だけあって、授業についていくのがやっとな私は、これくらいの時期からテスト勉強を始めないと、間に合わない。
「あっ、でも、これ見て」
私は、自分のスマホに表示した写真を、朝比奈君に見せた。
「おっ。いいじゃん、これ。俺、これ欲しい」
そこには、百均で買ったプラスチックケースに、毛糸で編んだものを貼り付けたスマホケースが写っている。
アーガイル柄のデザインで、白をベースに、ターコイズブルーのひし形と、紺と赤のラインが入ったものだ。
「朝比奈君のスマホの機種、ちゃんと確認してから買えばよかったな……」
「これ、サイズが合えばあげられるんだけど……」
私のスマホに合わせて買ってしまったから、朝比奈君のものに合うかどうかわからない。
(男性用として作るつもりだったのに…)
ちゃんと朝比奈君のスマホの機種を確認してからにすればよかったと、少し後悔した。
「うーん、確かに俺のはもっと大きいやつだな。」
朝比奈君は制服のポケットに手を入れた。
「ほら、これ」
そう言って、彼は自分のスマホを取り出して見せてくれた。
「今度、朝比奈君の好きな色で作るね。」
「ほんと? やった、嬉しい。」
こうして、素直に嬉しい気持ちを笑顔で見せ合える。
穏やかな時間。
ぼやけていた景色が、少しずつ色を取り戻していく。
「俺、次はこんなのがいいと思うんだけど」
そう言って、朝比奈君は差し出していたスマホを操作する。
検索結果に表示された画像を、私に見せてきた。
「パイロット帽って知ってる?」
私は静かに首を横に振る。
「もともと飛行機乗りの人が被ってた帽子なんだけど、毛糸で作ったらかっこいいんじゃないかと思って。」
想像してみる。
「……いい。とってもいい。例えば、朝比奈君のコートの色に合わせて、チャコールグレーの毛糸に……」
そんなふうに、浮かんできたイメージを、朝比奈君と一緒に、色や毛糸の種類を相談しながら膨らませていった。



