三角形のショールは、主人公の衣装だった。
大きさと色が書かれたメモをもらい、早速創作活動に勤しむ。
菫色の毛糸が、一目編むごとにコロコロとリズムよく転がっていった。
ショールを頼まれた、あの日の放課後。
朝比奈君に誘われてファミレスへ向かった。
何があったかを詳しく話すと、朝比奈君は優しい声で言った。
「良かったね、遠野。遠野を頼ってくれる人が増えたね」
「増えた?」
私は、少し引っかかった気持ちで聞いてみる。
「うん、増えたよ。一番最初に遠野のこと頼ったのは俺でしょ?」
そう言って、彼はニカっと笑った。
「そんな! 私が朝比奈君に頼ったんだよ。
私は、朝比奈君には何もしてあげられてないのに…」
自分の不甲斐なさを思い、私は下を向いた。
そんな私に向かって、朝比奈君は静かに言った。
「遠野はさ、自分が思ってるよりずっと誰かの役に立ってるんだよ」
「美化委員でもそうだよ。遠野の仕事ぶりに、先生や先輩が『いつも助けられてる』って話してるのを聞いたことがあるんだ」
「俺なんて、諦めていた夢を叶えてもらえたんだよ。クラスのみんなだって、きっと遠野に感謝する日が来る」
朝比奈君は私の前髪をしっかりと見た。
「そろそろ、その前髪を上げて、周りを見てみたらどうかな?」
「俺が言うのもおかしいかもしれないけど…」
そう小さく付け足して、朝比奈君はにっこりと微笑んだ。
私はその言葉を思い返しながら、そっと前髪に手をやった。
(そんなことができた時、私はもう少し前に進めるだろうか……。)
私は、その時の朝比奈君の言葉を思い出していた。
(どうか、少しでもいいから、恐怖心が和らぎますように……)
毛糸の一目一目に、願いを込めながら編み進めた。
編み物を頼まれて三日目の朝。
私は出来上がったショールを紙袋に入れ、学校へ向かった。
(ガッカリされたらどうしよう……)
(イメージと違ったらどうしよう……)
そんな不安が、頭の中でぐるぐると渦巻く。
いつもより早く学校に着いてしまった私は、自分の席に座り、何も乗っていない机をただ見つめていた。
衣装担当のグループが、笑い声を響かせながら登校してくる。
彼女たちの支度が終わるのを待ち、紙袋を抱えて静かに近づく。
「あの……」
振り返った彼女と目が合う。
「あっ、遠野さん、おはよう!」
明るい声で挨拶してくれる。
「どうしたの? 何かわからないところがあった?」
私はふるふると首を振り、震える手で紙袋を差し出す。
彼女はそれを受け取り、中身を確認した。
中から紫色の三角形が現れると、動きが止まった。
そして目をまんまるにして――
「えっ、もうできたの?」
すぐに目の前で広げる。
「すごい! 私のイメージにぴったりだよ!」
その声に反応して、女子たちが次々と集まってくる。
「遠野さん、すごい!」
教室中から、歓声と拍手が飛び交った。
チラッと朝比奈君を確認する。
彼は少しだけ私を視界に入れると、前を向いてしまった。
ただ、右手は握られ、親指だけが上を向いている。
気づくと、主役の女の子の顔まわりにショールが巻かれていた。
「良かった」
緊張が解けた私は、無意識にそう口にしていた。
その声を聞いたクラスメイトたちは、もう一度「おーっ」と歓声と拍手を上げた。
大きさと色が書かれたメモをもらい、早速創作活動に勤しむ。
菫色の毛糸が、一目編むごとにコロコロとリズムよく転がっていった。
ショールを頼まれた、あの日の放課後。
朝比奈君に誘われてファミレスへ向かった。
何があったかを詳しく話すと、朝比奈君は優しい声で言った。
「良かったね、遠野。遠野を頼ってくれる人が増えたね」
「増えた?」
私は、少し引っかかった気持ちで聞いてみる。
「うん、増えたよ。一番最初に遠野のこと頼ったのは俺でしょ?」
そう言って、彼はニカっと笑った。
「そんな! 私が朝比奈君に頼ったんだよ。
私は、朝比奈君には何もしてあげられてないのに…」
自分の不甲斐なさを思い、私は下を向いた。
そんな私に向かって、朝比奈君は静かに言った。
「遠野はさ、自分が思ってるよりずっと誰かの役に立ってるんだよ」
「美化委員でもそうだよ。遠野の仕事ぶりに、先生や先輩が『いつも助けられてる』って話してるのを聞いたことがあるんだ」
「俺なんて、諦めていた夢を叶えてもらえたんだよ。クラスのみんなだって、きっと遠野に感謝する日が来る」
朝比奈君は私の前髪をしっかりと見た。
「そろそろ、その前髪を上げて、周りを見てみたらどうかな?」
「俺が言うのもおかしいかもしれないけど…」
そう小さく付け足して、朝比奈君はにっこりと微笑んだ。
私はその言葉を思い返しながら、そっと前髪に手をやった。
(そんなことができた時、私はもう少し前に進めるだろうか……。)
私は、その時の朝比奈君の言葉を思い出していた。
(どうか、少しでもいいから、恐怖心が和らぎますように……)
毛糸の一目一目に、願いを込めながら編み進めた。
編み物を頼まれて三日目の朝。
私は出来上がったショールを紙袋に入れ、学校へ向かった。
(ガッカリされたらどうしよう……)
(イメージと違ったらどうしよう……)
そんな不安が、頭の中でぐるぐると渦巻く。
いつもより早く学校に着いてしまった私は、自分の席に座り、何も乗っていない机をただ見つめていた。
衣装担当のグループが、笑い声を響かせながら登校してくる。
彼女たちの支度が終わるのを待ち、紙袋を抱えて静かに近づく。
「あの……」
振り返った彼女と目が合う。
「あっ、遠野さん、おはよう!」
明るい声で挨拶してくれる。
「どうしたの? 何かわからないところがあった?」
私はふるふると首を振り、震える手で紙袋を差し出す。
彼女はそれを受け取り、中身を確認した。
中から紫色の三角形が現れると、動きが止まった。
そして目をまんまるにして――
「えっ、もうできたの?」
すぐに目の前で広げる。
「すごい! 私のイメージにぴったりだよ!」
その声に反応して、女子たちが次々と集まってくる。
「遠野さん、すごい!」
教室中から、歓声と拍手が飛び交った。
チラッと朝比奈君を確認する。
彼は少しだけ私を視界に入れると、前を向いてしまった。
ただ、右手は握られ、親指だけが上を向いている。
気づくと、主役の女の子の顔まわりにショールが巻かれていた。
「良かった」
緊張が解けた私は、無意識にそう口にしていた。
その声を聞いたクラスメイトたちは、もう一度「おーっ」と歓声と拍手を上げた。



