陽炎に揺れる夢

創作意欲に突き動かされ、あっという間に夏休みは終わった。
かろうじて宿題だけは、やりたくない気持ちを押さえつけて、編み物の合間にねじ込んだ。

二学期も始まり、久しぶりに朝比奈君の半分も見えていない顔を確認する。相変わらず、彼の周りの空気は揺れている。

私はある提案をしようと、今日は自分から朝比奈君をファミレスに誘ってある。

今日も学校の終わりは早い。

まずはファミレスでお昼を済ませ、話はその後に…という雰囲気になり、今回も美味しそうなメニューに頭を悩ませた。

食事を済ませると早速本題へ。

「作ってみたよ、男性用のマフラーなんだけど…」

私はスマホを見せた。そこには、二つ折りになっているマフラーの画像が表示されている。

それは、真ん中が片側だけ膨らんでいる青色のマフラーだ。

「綺麗な色のマフラーだな。なんか、見たことない形だけど…」

「これはね、真ん中のところがフードになってるの。だから、頭に被れるんだよ」

そう説明する私に、朝比奈君は少し首をかしげた。

「実際につけてる写真がないと、上手くイメージできないなぁ…」

(よしっ!)

私は心の中でそう思った。
提案しようとしていた話に、自然に流れが向いてきた。

「そうだよね、誰かが着てくれると、わかりやすいよね」

私は、少し含みを持たせるように話した。

じっと朝比奈君を見つめる。

(まぁ、私の前髪で見つめられていることに気づかないだろうけど…)

しばらく私の話の続きを待っていた朝比奈君が何かを察知したように口を開いた。

「? えっ? あっ? 俺?
もしかして、俺にモデルになれって言ってるの?」

私は、思いっきりうなずいた。

「インスタをやってると、大きさがわからないって声が結構あってね」

「手に持った写真をあげて欲しいって。
でも、私は少しも写りたくなくて…」

「マフラーなら顔の半分を隠せるし、横や後ろ姿ならどうかなって」

「それに、このマフラーは朝比奈君をイメージして作ったんだ。似合いそうな色を選んで」

「だから…。写真、撮らせてもらえないかな?」

朝比奈君は眉間にシワを寄せながら目を閉じた。

「遠野が写真を撮るんだよな」

朝比奈君は、真剣な顔で私の顔を覗き込んできた。

「うん、私だけ。良ければインスタにあげさせてもらいたいけど、無理強いはしない。朝比奈君が納得したものだけ使う」

彼の周りの空気が、少しだけクリアになった気がした。

「わかった。やってみるよ」

「それに、遠野の力になりたいって言ったのは俺だしな」

私たち二人の止まった時間が動き出した瞬間だった。