その後はテストで早く帰る日が続いたため、しばらくは委員会の仕事もなかった。
放課後、ファミレスに行く日もない。
夏休みまであと一週間となった日の夜、朝比奈君からスマホにメッセージが届いた。
『明日、学校終わりにファミレスに行かない?』
そう書かれていた。
私は、『OK』というスタンプだけを返した。
ただ、いつもなんとなく会話をしているだけだったのに、こうして委員会のない日にまで会うなんて…。
(何かあったのかな…)
そんなことを考えながら、眠りについた。
翌日。
今日のファミレスは、いつもと少し感じが違う。
学校が早く終わったせいか、店内には子どもが多い。
小さな子を連れたお母さんたちが、ランチをしに来ている。
きっと、日頃の子育てで溜まった疲れを、情報交換やおしゃべりで発散しているのだろう。
「遠野、何か食べる?」
「俺、腹減ったから、何か頼もうと思ってさ」
そう言うと、朝比奈君は、私の分のメニューも取ってくれた。
いつもは飲み物を頼んでいるから、私たちはお互い、マスクを外した顔は知っている。
それでも、『口を開けてご飯を食べる』という行為には、まだ抵抗があった。
――朝比奈君は、もう大丈夫になったんだ。
そう思った瞬間、胸の奥が、少しだけざわついた。
自分だけが、同じ場所に取り残されている気がして、怖くなる。
(……私も、進まなくちゃ)
これは、きっとその次のステップ。
そう思って、私は小さく息を吸い込み、メニューに視線を落とした。
朝比奈君は、
「おー、ステーキうまそう、でも、高いからな…
ハンバーグ…ソースかぁ、どれも食べたいなぁ…
うーん、チキンも捨てがたい…」
と、うんうん唸りながら決めかねている。
そんな彼が面白くて、すっと緊張が解けた。
(何をごちゃごちゃ考えてたんだろう。私も食べたい物を食べよう)
そうして、朝比奈君はハンバーグセット、私は明太子スパゲティをそれぞれ頼んだ。
「そうだ、考えてみたらクラスメイトと食事するのって、いつぶりだろう。なんか、そう思ったら緊張してきた」
そう、朝比奈君は呟いた。
私は今気づいたの?と思ったら可笑しくなって、思わず笑った。
「えっ? なんか面白いこと言った?
俺、逆に心配になりそうなこと口にしたのに」
そうして目をまんまるくしている彼を見たら、余計に可笑しくなった。
「あはは、ごめん。さっきまでの私、めちゃくちゃ緊張してて、どうしようか悩んでたのに、朝比奈君、全然気にしてない様子だったから。自分だけ取り残されてるみたいで必死に怖さと闘ってたんだよ」
「えっ、そうだったの? じゃぁ遠野は、この怖さに打ち勝ったんだね」
俺も頑張らなくちゃ、なんて言うから、先輩ヅラして軽く
「頑張れー」
って言ってみた。
「遠野先輩かよ」
ファミレスに、子どもたちの無邪気な笑い声が響いている。
その声と同じように、私たちのテーブルからも笑い声が漏れた。
ゆらりと揺れる陽炎の上に乗るように、声はゆらゆらと天井へ伸びていった。
放課後、ファミレスに行く日もない。
夏休みまであと一週間となった日の夜、朝比奈君からスマホにメッセージが届いた。
『明日、学校終わりにファミレスに行かない?』
そう書かれていた。
私は、『OK』というスタンプだけを返した。
ただ、いつもなんとなく会話をしているだけだったのに、こうして委員会のない日にまで会うなんて…。
(何かあったのかな…)
そんなことを考えながら、眠りについた。
翌日。
今日のファミレスは、いつもと少し感じが違う。
学校が早く終わったせいか、店内には子どもが多い。
小さな子を連れたお母さんたちが、ランチをしに来ている。
きっと、日頃の子育てで溜まった疲れを、情報交換やおしゃべりで発散しているのだろう。
「遠野、何か食べる?」
「俺、腹減ったから、何か頼もうと思ってさ」
そう言うと、朝比奈君は、私の分のメニューも取ってくれた。
いつもは飲み物を頼んでいるから、私たちはお互い、マスクを外した顔は知っている。
それでも、『口を開けてご飯を食べる』という行為には、まだ抵抗があった。
――朝比奈君は、もう大丈夫になったんだ。
そう思った瞬間、胸の奥が、少しだけざわついた。
自分だけが、同じ場所に取り残されている気がして、怖くなる。
(……私も、進まなくちゃ)
これは、きっとその次のステップ。
そう思って、私は小さく息を吸い込み、メニューに視線を落とした。
朝比奈君は、
「おー、ステーキうまそう、でも、高いからな…
ハンバーグ…ソースかぁ、どれも食べたいなぁ…
うーん、チキンも捨てがたい…」
と、うんうん唸りながら決めかねている。
そんな彼が面白くて、すっと緊張が解けた。
(何をごちゃごちゃ考えてたんだろう。私も食べたい物を食べよう)
そうして、朝比奈君はハンバーグセット、私は明太子スパゲティをそれぞれ頼んだ。
「そうだ、考えてみたらクラスメイトと食事するのって、いつぶりだろう。なんか、そう思ったら緊張してきた」
そう、朝比奈君は呟いた。
私は今気づいたの?と思ったら可笑しくなって、思わず笑った。
「えっ? なんか面白いこと言った?
俺、逆に心配になりそうなこと口にしたのに」
そうして目をまんまるくしている彼を見たら、余計に可笑しくなった。
「あはは、ごめん。さっきまでの私、めちゃくちゃ緊張してて、どうしようか悩んでたのに、朝比奈君、全然気にしてない様子だったから。自分だけ取り残されてるみたいで必死に怖さと闘ってたんだよ」
「えっ、そうだったの? じゃぁ遠野は、この怖さに打ち勝ったんだね」
俺も頑張らなくちゃ、なんて言うから、先輩ヅラして軽く
「頑張れー」
って言ってみた。
「遠野先輩かよ」
ファミレスに、子どもたちの無邪気な笑い声が響いている。
その声と同じように、私たちのテーブルからも笑い声が漏れた。
ゆらりと揺れる陽炎の上に乗るように、声はゆらゆらと天井へ伸びていった。



