ねえ、はやく降参してよ。 ――同じ苗字になっても、まだ足りない。甘くて焦れったい心理戦を続ける夫婦。


「…………」

「…………」

「もう一回」

 その黒髪に手を添え、ねだるものの。

「そんな、何回も言わないよ」

 胸元から、くぐもった声で拒まれた。

「言えって」

 ソファに押し倒し、弱いところを軽くくすぐってやる。
 心地よい笑い声が、その唇からこぼれる。

 それでも、なかなか降参しない。

 しばらくそうやって、子供じみた攻防を続けていたけれど。


「じゃあ……言わせてみて?」


 強がりと甘さが混ざり合った瞳で、仕掛けられた。


「……見てろよ?」

 お望み通り、受けて立つ。

 一旦身体を起こし、彼女の淹れたコーヒーの続きに戻る。
 飲み終えるまでに、手札を並べることにした。

 一筋縄ではいきたくない、俺たちは。
 こうして飽きもせず、甘いゲームを繰り返すのだ。





―― 終 ――