ねえ、はやく降参してよ。 ――同じ苗字になっても、まだ足りない。甘くて焦れったい心理戦を続ける夫婦。


 代わりに、耳元へ唇を寄せる。
 俺の言葉で訳したものを、そっと落としてやった。

 マナは何度か瞬きをしてから、ぷっ、と小さく笑った。

「なんか、ハルっぽいね」

 肩を揺らしながら「だから彼も歌う前、ハルのほう見てたんじゃないの」と続けた。

 再びカップへ手を伸ばそうとした、そのとき。
 腰へ、腕を回された。

 柔らかな重み。
 珍しい行動に、黙って見やると。


「あいしてるよ」


 一度だけ、美しい微笑みを見せながら、彼女が言った。

 そして、すぐにまた顔を埋めてしまう。