ねえ、はやく降参してよ。 ――同じ苗字になっても、まだ足りない。甘くて焦れったい心理戦を続ける夫婦。

 ◇

 すぐ隣で、無防備な寝顔が晒されている。
 起こさなければいけないのに、しばらく見つめてしまっていた。

「ハル」

「…………」

 その身体を、そっと揺らす。

「起きて。時間だよ?」

「んー……」

 ロンドンに来てからのハルは、週末になるとたっぷり寝るようになった。
 仕事の疲れが溜まっているか、あるいは――はしゃぎすぎているだけかもしれないけれど。

 繰り返し声をかけると、ようやく身体を起こした。

 ラフなトレーナーとジーンズを着た彼と連れ立って、マンションの共有スペースへ向かう。