ねえ、はやく降参してよ。 ――同じ苗字になっても、まだ足りない。甘くて焦れったい心理戦を続ける夫婦。


 公園にも、家々の玄関先にも、水仙やクロッカスが一斉に顔を出した。
 街のあちこちが鮮やかに色づいていくのが、この国の春なのだと知った。

 散歩をするには、うってつけの季節。

 なのだけれど。

 私は相変わらず――彼の温度にぴたりと閉じ込められている。


「マナ」

 白んでいく意識の向こうから、甘ったるい声で呼び止められる。

「目、開けろって」

「……っ」

 またしてもわざと吐息を混ぜながら囁かれ、肩が小さく跳ねてしまう。

「……なに……?」

 やっとの思いで持ち上げた瞼の隙間から、不敵な笑みが見えた。


「愛してるよ?」


「…………」

 この生意気な年下夫は、近頃。
 あからさまにこうした言葉を与えてくる。