ねえ、はやく降参してよ。 ――同じ苗字になっても、まだ足りない。甘くて焦れったい心理戦を続ける夫婦。

 ◇

 カーテン越しに、朝の光が部屋を白く満たしていく。

 ベッドの中から、小さな呻き声が漏れた。

「起きたか。酔っ払い」

 声をかけると、重たげな瞼がゆっくりと開かれた。
 焦点の合わない瞳が、ワイシャツを羽織ったまま立つ俺を捉えた。

「……? おはよう……」

 寝起きのせいか、酒のせいか、掠れた声。

 昨晩、風呂も入らずに眠り込んだ髪は、あちこちに好き勝手な癖をつけている。
 自分の身体を見下ろしたマナは、そこでようやく気がついたらしい。

「……えっ、服着てない! なんで!」

 勢いよく上体を起こし、こちらを睨みつけてくる。
 呆れて息を吐いた。

「なんもしてねーよ。暑いって自分で脱いだんだよ。覚えてねーのかよ」

 風邪をひくからやめておけと、止めるほうが余程骨が折れたというのに。

「…………ゴメンナサイ」

 みるみる萎んでいく声。
 ガーゼケットを手繰り寄せながら、しゅんと肩を落としている。