その週の終わりの朝、また早く目が覚めた。着替えて家を出て、いつものように搬入口へ向かう。自分が何をしに行くのか、わかっていた。足が止まらなかった。
角を曲がると、藤堂さんがいた。今朝は廊下の入口近くで、まっすぐこちらを見ていた。
もしかして、待っていてくれたの?
……いや、違う。藤堂さんは、私が毎朝ここに来ていたことを、最初から全部知っていたのだ。隠れて見ていたつもりだったのは、私だけ。
藤堂さんは何も言わず、ただ、私が近づいていくのをじっと見つめている。その静かな視線が『おいで』と促してくれている気がして、私は意を決して一歩を踏み出した。
恐る恐る近づいて、彼の隣に並んだ。その瞬間、ふわりと、彼の使っている整髪料の香りが鼻先を抜けた。
完璧な人の輪郭の中に、こんな柔らかい匂いがあったのか。
猫は今日は逃げもせず、かといって近づきもせず、丸まってこちらを見ている。
「猫、今日は逃げないですね」
「警戒しているだけです。逃げないのと、懐くのは、別の話なので」
「ずいぶん詳しいんですね」
「三週目なので」
え?



