その崩れ方が、好きです〜完璧なホテルマネージャーは、私にだけ素顔を見せる〜


橙はするりと身をひるがえして、段ボールの陰に逃げた。

「……また駄目でした」

藤堂さんが、本気で肩を落とした。さっきまでの告白の余韻も忘れたような、心から残念そうな顔だった。私は思わず笑った。

「ふふ。やっぱりその顔、好きです」

藤堂さんがこちらを向いた。

「今のはフォローですか」

「フォローじゃないです。一番、好きな顔です」

藤堂さんが少しの間、私を見ていた。それから、観念したように笑った。目尻に、あの笑い皺が刻まれる。

「橙には一生、勝てない気がします」

「勝たなくていいです。負けているところが、好きなので」

藤堂さんが小さく息を吐いた。それから私の手に、自分の手を重ねた。

指先が触れた場所から、冷たさよりも先に、彼の体温が伝わってくる。そのまま、体が引き寄せられる。

気づいたときには、藤堂さんの胸元に額が触れていた。

眼鏡を外す気配がする。レンズを仕舞う、小さな音。それから、腕が回ってきた。