その崩れ方が、好きです〜完璧なホテルマネージャーは、私にだけ素顔を見せる〜


息が止まりそうになった。

「あなたは、俺が隙を見せるたびに、嬉しそうな顔をしていた。休憩室で、あなたが俺の真似をしてくれているのを聞いた時も、ちっとも嫌な気がしなかった。あなたが、本当に愛おしそうにその言葉を口にしてくれていたから」

一人称が「私」から「俺」に変わったことに、遅れて気づいた。

「猫に振られた時も。橙の名前で悩んだ時も。困った顔をするたびに、あなただけは笑わずに、優しい顔で見ていた。だから、気づいたんです。あなたは、完璧な俺じゃなくて、情けない俺の方を、見ていてくれたんだと」

完璧でいることは、ずっと藤堂さんにとっての鎧だったのかもしれない。その鎧の隙間を、私はいつの間にか覗き続けていた。

「香坂さんがフロントで引き継ぎノートを書く時の、眉間の皺が好きです。あなたと話すたびに、もう少し話したいと思っていた──半年前、俺がこのホテルに着任したときから、ずっとです。抑えるのが、もう限界でした」

眉間の皺。藤堂さんはそんなところを、見ていたのか。