「未央ちゃん、次の移動教室、一緒に行きましょ」
「うん! いま用意するね」
風見中に転校してきて2週間くらい。
仲良くしてくれる友だちも増えてきて、学校生活にも慣れてきた。
初日に声をかけてくれた学級委員長の日向さんとは、「佳奈ちゃん」「未央ちゃん」と呼び合う仲だ。
そして、佳奈ちゃんの友だちのこころちゃんとも仲良くなれた。
優等生な佳奈ちゃんに比べてこころちゃんは……なんというか、そう、ちょっとエキセントリック。
こころちゃんは、いつも分厚いノートを手放さない。
それは移動教室でも片時も離すことはないのだ。
「こころちゃん、教科書忘れてるっ」
「あら? ついうっかり」
ノートは持っても教科書は忘れるなんて……。
うん、わかるよ。こだわりってあるよね。
それはともかく、次の授業は理科なので理科実験室に行かないと。
こうして移動教室が苦じゃなくなったのも、東くんたちの校内案内のおかげなんだよね……。
「教科書よし、ノートよしっと」
持ち物を確認して佳奈ちゃんとこころちゃんのところに行こうとすると、袖口をぴんと引っ張られた。
「ねえ」
机に引き戻される。もちろん犯人は隣の席の北斗くんだ。
「ど、どしたの」
「……筆記用具、忘れてるよ」
「あ」
北斗くんが私の机に取り残された筆箱を指さす。
ああもう、私まで「ついうっかり」だ!
「ごめん、教えてくれてありがとう」
「しっかりしなよね」
北斗くんはすっと席を立って先に教室を出ようとする。
「ほ、北斗くんも一緒に理科実験室行かない?」
「行かない」
短くそう言って、北斗くんはひとりで教室を出てしまった。
うーん。ひとりになりたいお年頃ってやつかな?
「未央ちゃん、どうしたの? 休み時間終わっちゃうよ」
そうだ、理科実験室に行かなくちゃ!
佳奈ちゃんとこころちゃんの間に滑りこんで歩き出す。
「筆箱忘れててさ。北斗くんが教えてくれたの」
「ま、あの北斗くんが! 私、ほとんど会話したことがないの」
こころちゃんが目を丸くする。北斗くん、普段は無口なのかな。
でも、私にはいろいろ失礼なことも含めて喋ってくれるよねえ……。
「北斗くん、羅針盤のメンバーとは喋ってるけど、クラスではそうでもないから、なんか意外」
「そうなの?」
今度はこっちがびっくりだ。
「きっと、未央ちゃんは特別なのね」
にやりと佳奈ちゃんが笑う。
と、特別?
「はうわっ!」
そこでこころちゃんがぴょんと垂直に飛び上がった。
き、きた。こころちゃんのインスピレーションタイムだ!
「普段クールな彼。そんな彼が私だけに見せる特別な顔! 近づく距離、けれどそこにはふたりを引き裂く異次元のライバルが! きゃああっ、きたきたきたわ~っ!」
こころちゃんは分厚いノートを取り出すと、目にもとまらぬスピードで、今のインスピレーションをメモし始める。
そう、こころちゃんがいつも抱えているのは自分オリジナルのネタ帳なのだ。
マンガ家志望なこころちゃんは、こうして日常生活のいろんな出来事をメモするのが習慣らしい。
「そ、そんなロマンチックなものじゃないと思うけどなあ。私があまりにも迷いまくるから心配してくれてるだけだろうし」
思えば最初の出会いからして、迷子中だったからなあ……。
生徒会ってことは生徒のお困り事をほっておけないんだろうし、北斗くんも優しいところがあるよね。
そう言うと、佳奈ちゃんとこころちゃんは、ふたりそろって顔を見合わせて脱力した。
はああ~と深いため息が聞こえる。
「こころちゃん……」
「佳奈さん……」
「「ニブいって、大変よねえ~!!」」
きれいなシンメトリーで首を振るふたりは、すっかり何かをわかりあっているみたい。
「え、なになに、どういうこと?」
「いくら未央ちゃんの頼みでも、これだけは答えられないのっ」
「答えは自分で見つけるのよ~!」
ドラマチックに廊下を走るふたりを追っかける。
なんだかこれって青春じゃない?
先生に見つかりませんようにと祈りながら、私も廊下を走っていった。
「うん! いま用意するね」
風見中に転校してきて2週間くらい。
仲良くしてくれる友だちも増えてきて、学校生活にも慣れてきた。
初日に声をかけてくれた学級委員長の日向さんとは、「佳奈ちゃん」「未央ちゃん」と呼び合う仲だ。
そして、佳奈ちゃんの友だちのこころちゃんとも仲良くなれた。
優等生な佳奈ちゃんに比べてこころちゃんは……なんというか、そう、ちょっとエキセントリック。
こころちゃんは、いつも分厚いノートを手放さない。
それは移動教室でも片時も離すことはないのだ。
「こころちゃん、教科書忘れてるっ」
「あら? ついうっかり」
ノートは持っても教科書は忘れるなんて……。
うん、わかるよ。こだわりってあるよね。
それはともかく、次の授業は理科なので理科実験室に行かないと。
こうして移動教室が苦じゃなくなったのも、東くんたちの校内案内のおかげなんだよね……。
「教科書よし、ノートよしっと」
持ち物を確認して佳奈ちゃんとこころちゃんのところに行こうとすると、袖口をぴんと引っ張られた。
「ねえ」
机に引き戻される。もちろん犯人は隣の席の北斗くんだ。
「ど、どしたの」
「……筆記用具、忘れてるよ」
「あ」
北斗くんが私の机に取り残された筆箱を指さす。
ああもう、私まで「ついうっかり」だ!
「ごめん、教えてくれてありがとう」
「しっかりしなよね」
北斗くんはすっと席を立って先に教室を出ようとする。
「ほ、北斗くんも一緒に理科実験室行かない?」
「行かない」
短くそう言って、北斗くんはひとりで教室を出てしまった。
うーん。ひとりになりたいお年頃ってやつかな?
「未央ちゃん、どうしたの? 休み時間終わっちゃうよ」
そうだ、理科実験室に行かなくちゃ!
佳奈ちゃんとこころちゃんの間に滑りこんで歩き出す。
「筆箱忘れててさ。北斗くんが教えてくれたの」
「ま、あの北斗くんが! 私、ほとんど会話したことがないの」
こころちゃんが目を丸くする。北斗くん、普段は無口なのかな。
でも、私にはいろいろ失礼なことも含めて喋ってくれるよねえ……。
「北斗くん、羅針盤のメンバーとは喋ってるけど、クラスではそうでもないから、なんか意外」
「そうなの?」
今度はこっちがびっくりだ。
「きっと、未央ちゃんは特別なのね」
にやりと佳奈ちゃんが笑う。
と、特別?
「はうわっ!」
そこでこころちゃんがぴょんと垂直に飛び上がった。
き、きた。こころちゃんのインスピレーションタイムだ!
「普段クールな彼。そんな彼が私だけに見せる特別な顔! 近づく距離、けれどそこにはふたりを引き裂く異次元のライバルが! きゃああっ、きたきたきたわ~っ!」
こころちゃんは分厚いノートを取り出すと、目にもとまらぬスピードで、今のインスピレーションをメモし始める。
そう、こころちゃんがいつも抱えているのは自分オリジナルのネタ帳なのだ。
マンガ家志望なこころちゃんは、こうして日常生活のいろんな出来事をメモするのが習慣らしい。
「そ、そんなロマンチックなものじゃないと思うけどなあ。私があまりにも迷いまくるから心配してくれてるだけだろうし」
思えば最初の出会いからして、迷子中だったからなあ……。
生徒会ってことは生徒のお困り事をほっておけないんだろうし、北斗くんも優しいところがあるよね。
そう言うと、佳奈ちゃんとこころちゃんは、ふたりそろって顔を見合わせて脱力した。
はああ~と深いため息が聞こえる。
「こころちゃん……」
「佳奈さん……」
「「ニブいって、大変よねえ~!!」」
きれいなシンメトリーで首を振るふたりは、すっかり何かをわかりあっているみたい。
「え、なになに、どういうこと?」
「いくら未央ちゃんの頼みでも、これだけは答えられないのっ」
「答えは自分で見つけるのよ~!」
ドラマチックに廊下を走るふたりを追っかける。
なんだかこれって青春じゃない?
先生に見つかりませんようにと祈りながら、私も廊下を走っていった。



