春がつれてきたきみは・・・

『カナに折り入って頼みがあるんだ』

中3の夏休み、父からLINEが来た。

親友のアキと並んで、体育館の舞台に座って足をブラブラさせていた時だ。

地元の高校に剣道の推薦で入学が決まっていたから2人とも暇だった。

アキが私のスマホを覗き込んだ。

「うわあ、まただね、カナのパパ」

そうなのだ。いつものことだ。

向かいの家のおばあさんが入院したから犬を預かって。

犬の名前はレモン。散歩と餌とお水を忘れずに。

隣の奥さんがつわりで何も食べられないらしいから食べたいものがあるか聞いてあげて。

ちなみに隣の奥さんが「レモン」と言ったから私は犬のレモンを抱えて逃げたりして・・・。

とにかく警察官の父は人助けに命をかけている。いわゆる職業病なのだ。

少しでも困っている人がいたら惜しみなくその手を差し伸べる。

でも、父は仕事で忙しい。夜勤もあるし事件があれば家に戻れない日が続く。

そうなると全部私に委ねられるわけで。

暇なうえにお金がないから遊びにも行けない。

だからやれないことはない。父の手伝いを。

でも、今回はどうも胡散臭そうで・・・。

「ある人を救ってほしい」

いつもなら『向かいのおばあちゃん』とか、『隣の奥さん』と名指しでラインしてくるのに、ある人って・・・誰?