その手を、もう離さない


放課後。

帰り道。

二人で歩く。

沈黙。

でも。

今日は少し違った。

翡翠の手が。

そっと美都の制服の袖を摘まむ。

美都が止まる。

「何だ」

「……恋人だから」

小さな声。

聞こえるか聞こえないか。

そのくらい。

美都は数秒固まる。

そして。

何も言わず。

摘ままれていた袖ごと。

その手を握った。

翡翠が目を見開く。

美都は前を向いたまま。

耳を赤くしていた。

「離れるな」

小さな声。

でも。

翡翠には十分だった。

その言葉だけで。

顔が真っ赤になるくらい。

嬉しかった。