その手を、もう離さない


「待った?」

目の前まで来た翡翠がそう聞いた。

少し息が上がっている。

急いできたのだろう。

そんな些細なことが嬉しくなる。

待った。

正直かなり待った。

けれど、それを言ったら翡翠はきっと申し訳なさそうな顔をする。

だから美都は首を振った。

「別に」

いつもの答え。

けれど翡翠はすぐに笑った。

「嘘」

即答だった。

美都が眉を寄せる。

「なんでそう思う」

「だって」

そこで言葉を区切り、翡翠は少しだけ楽しそうに目を細めた。

「ずっとこっち見てたから」

その瞬間、美都の思考が止まった。