その手を、もう離さない


――何やってんだろ。

心の中で呟く。

待ち合わせなんてしていない。

一緒に帰る約束だってしていない。

なのに勝手に待っている。

まるで大型犬みたいだな、とふと思った。

昔の自分なら絶対に認めなかっただろう。

誰かを待つなんて。

誰かが来ることを期待するなんて。

そんなことをしている自分が少し不思議だった。

けれど、それ以上に自然だった。

翡翠と出会う前の自分を思い出そうとしても、最近はうまく思い出せない。

一人でいることが当たり前だった。

誰かを頼ることもなかった。

それで平気だったはずなのに。

今は違う。

翡翠がいないと落ち着かない。

会えないと少し寂しい。

そんな自分を認めるたびに、胸の奥がくすぐったくなる。