その手を、もう離さない


「ごめん」

翡翠が慌てて離れようとする。

その時だった。

無意識だった。

本当に。

無意識に。

美都の手が伸びる。

制服の袖を掴んだ。

翡翠が固まる。

美都も固まる。

自分で何をしたのか理解した。

沈黙。

長い沈黙。

翡翠がそっと聞く。

「……美都?」

美都は顔を逸らしたまま。

小さく呟く。

「そのままでいい」

翡翠の心臓が止まりそうになる。

肩が触れる距離。

袖を掴まれたまま。

離れたくない。

そんな本音を。

不器用な恋人は。

言葉に出来なかった。