「神城先輩?」
後輩が呼ぶと美都は何事もなかったように振り返った。
「何」
いつもの声にいつもの表情。
さっきの様子なんて嘘みたいだった。
後輩達も誰も気付いていない。
私だけが違和感を覚えたみたい。
無理してる。
そう思った。
根拠なんてない。
でもそうとしか見えなかった。
帰り道外は雨だった。
傘を差しながら歩く。
今日見た美都を思い出す。
優秀で頼られていてみんなから尊敬されていて確かに完璧だった。
だけど壁に手をついた瞬間の顔だけは違った。
あれは完璧な人の顔じゃない。
どこか壊れそうな顔だった。
「気のせい……じゃないよね」
雨音の中で呟く。
神城美都。
その人のことが少しだけ気になり始めていた。



